今年のGWは10連休だから7~8日のヨーロッパツアーに出かける人が多
いかもしれない。イタリアだとこのくらいの日数があればヴェネツィア、
ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ナポリまで全部行ける。2011年以降
イタリアはご無沙汰なので議論されることが多くなったオーバーツーリズム
の実態についてはっきりしたことは言えないが、過去の経験から現地の観光
地は大変な状況になっていることはある程度想像はできる。
これからヨーロッパはいいシーズンになるから、人気のあるイタリアには
世界中から観光客が押し寄せる。そうなるとツアーのなかに組み込まれてい
る美術館巡りに事前の予約が必要な場合、旅行会社は日程や時間のやりくり
が大変だろう。
例えば、ミラノ観光に入っているダ・ヴィンチ(1452~1519)の
‘最後の晩餐’の鑑賞はどうやって予約をとるのか、他人事ながら心配になっ
てくる。われわれが2006年4月に作品が展示してあるサンタ・マリア
・デレ・グラツィエ教会を訪問したときはすでに予約制(1回の入場は最高
25人まで、鑑賞時間は15分 今も変わらない?)になっていて、ツアー
参加者は何組かにわけて教会の中に入った。
‘最後の晩餐’は‘モナリザ’とともにダ・ヴィンチの代名詞となっている美術史
上の傑作だから、一度はみておきたい。ところが、この絵はフレスコ画では
ないため、修復がなされ色も部分的に蘇ったたとはいえ画面全体は絵具が
剥落しているところが多くある。だから、体の一部が欠けた彫像をみるとき
と同じ気分で同じくルネサンス絵画の傑作であるボッティチェリの‘ヴィーナ
スの誕生’をみたときのワクワク感とはまったくちがう。
この絵にはダ・ヴィンチのほかの絵にみられないすごい表現がある。それは
イエスが‘このなかに私を裏切る者がいる’と言ったあとの十二使徒のリアク
ションの描写。とくに激しい身振りで反応したのがイエスの右側にいる使徒
たち。すぐ隣の大ヤコブは両手を大きく広げ‘ええー、本当ですか!’と言わん
ばかり。そして、顔を出すトマスは人差し指を立てて‘裏切り者は一人です
か?’と問いかけようとしている。ダ・ヴィンチは使徒一人々の性格をみて
それにふさわしい動きと表情にして劇的に描いた。これがスゴイ!