ボッティチェリ(1445~1510)が若い頃描いた女性の絵は師匠の
描き方とよく似ている。その師匠リッピ(1406~1469)の最も
有名な作品がウフィツィにある‘聖母子と二天使’。手を合わせる聖母マリア
がとても魅力的なのはその清々しくシンプルな顔立ちが今イタリアの街を
歩いたらすぐに見つかりそうな現実感があるから。どうでもいいことだが、
散歩の途中によく出会うバレエのレッスン帰りの少女はこんなイメージ。
ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画を見上げると天地創造の物語
のほかに預言者や巫女のポーズにも目が釘づけになる。カスターニョ
(1421~1457)の有名人の肖像のなかにも女預言者が登場する。
その姿は預言者にはもったいないほど綺麗。お告げをもらったら即‘ハイ―、
わかりました!’と深々と頭を下げるのは間違いない。
ピエロ・デッラ・フランチェスカ(1416~1492)に関心をもち続
けているが、画家とのつきあいはこの横向きの肖像画‘ウルビーノ公
フェデリーゴ・ダ・モンテフェルトロ’と‘公妃バッティスタ・スフォルツァ’
からはじまった。目に焼きつくのはやはりモンテフェルトロの特徴のある
鼻。東洋人の大きくない鼻を見慣れているとこういう鼻が主張している
人物には唖然とする。
バルジェッロ美でも遭遇したポライウォーロ(1431~1498)は
彫刻だけでなく絵画でも同じように激しく戦うギリシャ神話の英雄ヘラク
レスを描いている。‘ヒュドラと戦うヘラクレス’と‘アンタイオスと戦うヘラ
クレス’はとても小品。これはメディチ宮のために描かれた大作の小さな
コピー。絵のサイズは小さいがヘラクレスの強靭な体と敵を倒すアクロ
バット的な姿勢を息を呑んでみてしまう。