東近美工芸館で開催されている‘備前―土と炎から生まれる造形美’(2/22
~5/6)をみてきた。以前広島にいたときクルマで備前焼の窯がある備前市
伊部へ出かけた。以来、釉薬を使わない備前焼の魅力にとりつかれている。
広島のデパートで金重陶陽以降の作家の作品をずらっと揃えた備前焼展をみ
たが、東京ではトータルで備前焼を楽しめる展覧会にでくわす機会がなかっ
た。ようやく実現したのは東近美、となると期待値はどうしても高くなる。
なかに入って展示室を進んでいくこれ以上望めないほど充実した作品
が並んでいた。流石、東近美!古備前の茶道具にいいのがたくさんあったが、
思わず足がとまったのが‘三角花入’、三角の形がユニークなので桃山陶器とか
織部展では定番のように出品される。備前焼の中興の祖である金重陶陽
(1896~1967)の緋襷(ひだすき)をぐっと感じさせる‘緋襷茶盌’
も名品。
今回人間国宝になっている作家をはじめ備前焼といえばこの人という面々は
全部登場している。まさに備前のオールスターが勢揃い。そのなかで伊部の
外からやってきた隠崎隆一(1950~)は現代アート風の備前を生み出し
た先駆者のひとり。金重陶陽の息子、金重晃介(1943~)の‘聖衣’
(1994年)が備前の貴公子がつくった備前アヴァン・ギャルドなら、
鬼才隠崎隆一の‘混淆花器’は自然と大地から生まれてきた原始の美という感
じ。魂を強く揺すぶられる。
これまで縁がなかった作家で大変魅了されたのは今年45歳の伊勢崎晃一朗
(1974~)。父親の伊勢崎淳(1936~)も大胆な造形で新しい備前
の形をつくってきたが、そのチャレンジ精神は晃一朗にもしっかり受け継が
れており圧倒的な存在感のある‘畝壺’に驚愕した。そして、矢部俊一
(1968~)のステルス戦闘機を連想させる切れ味鋭いフォルムが目を惹
く‘光風’にもぐさっとやられた。