ブレイクの‘愛するアダムとイヴをみつめるサタン’(1808年)
美術の本では知っていても海外の美術館へ出かけないと見る機会がない画家がいる。例えば、プッサン(1594~1665)やロラン(1604~1682)。ルーヴルへいくと存分に楽しめるが、アメリカのブランド美を訪問してもよくでくわす。
ボストンにあるプッサンは軍神マルスと愛の女神ヴィーナスを描いたもの。ロンドンナショナルギャラリーにもボッテイチェリの同じ主題のものがあるが、愛が闘争を征服するというルネサンス期の寓意を表現している。マルスだって戦いで精神をすり減らすよりはヴィーナスを見てうっとりするほうが楽しいにきまっている。
回顧展に遭遇することを強く願っているのに一向に実現しないブレイク(1757~1827)、これまで少しまとまった形でみたのはてテートとアメリカのフォッグ美のウインスロップコレクションだけ。テートブリテンで手に入れたブレイクの画集にボストン美蔵が2点載っているが、なぜかこれまでお目にかかったことがない。2015年のときも必見リストに入れていたのにダメだった。
テートでジョン・マーチン(1789~1854)の壮大なスペクタクル絵画‘神の怒りの日’をみたときの感激は今でも忘れられない。感情をストレートに揺すぶるロマン主義が天地創造を絵画化するとこうなるのかと息を呑んでみていた。アメリカではマーチンはワシントンとボストンにいいのがある。‘エジプトの7番目の呪い’は絵葉書にもなっており、美術館自慢の作品。
ドラクロア(1798~1863)が何点も描いている跳びはねる馬やライオン狩りはアメリカコレクターにも人気があり、メトロポリタン、シカゴ、ボストン、ワシントンナショナルギャラリー、フィリップスコレクションで目を楽しませてくれる。ルーヴルでまず‘民衆を率いる自由の女神’みて、そのあとアメリカをまわるともうドラクロアから離れられなくなる。