ベラスケスの‘詩人ルイス・デ・ゴンゴラの肖像’(1622年)
グエルチーノの‘バビロンの反乱を知らされるセミラミス女王’(1624年)
アメリカの美術館にあるルーベンス(1577~1640)はルーヴルやミュンヘンのアルテピナコテークなどに飾ってるような大きな絵に出会うことはなく、ほとんどが普通サイズのもの。そのなかでボストンでみたのは異色の肖像画。描かれた人物はアラブ人。
ローマで絵の修業をしたルーベンスは1608年に母親が亡くなったのを機に故郷アントワープに戻って来る。この絵が描かれたのはその2年後、当時アントワープは交易で大いに栄えた港町。そのため、アフリカの人やアラブの商人たちも大勢いた。以前訪問したオランダのマウリッツハイス美では黒人を描いたものに遭遇した。レンブラントは心が広くそうした異国の人々もモデルにしていた。
スペイン絵画ではまずエル・グレコが肖像画の流れをつくり、それをベラスケス(1599~1660)とゴヤが受け継いでいく。4点みたベラスケスのなかでぐっとくるのは日本でも公開された‘詩人ルイス・デ・ゴンゴラの肖像’。国王とはちがって表現に脚色は一切なく、詩人の内面までよくとらえている。
古典絵画とそのあとのバロックまでをふくめて作品の数が最も多いのはレンブラント(1606~1669)で6点あった。‘アトリエのなかの自画像’は縦25cm、横32cmの小品だが、自画像シリーズの一枚として画集には必ず載っている作品だから思わずじっとみてしまう。印象深いのはキャンバスの後ろにできた影。レンブラントの魅力はやはり光の描写。
2015年西洋美で回顧展があったグエルチーノ(1591~1666)、この展覧会で多くの作品をみたのでその年の暮れボストンで遭遇した‘バビロンの反乱を知らされるセミラミス女王’にも敏感に反応した。傑作のひとつではなかろうか。