海外の有名な美術館が所蔵する作品を公開する展覧会は度々開催される。ではその回数が多い美術館はどこか。データをとっているわけではないが、印象としてはボストン美、ルーヴル、プラド、エルミタージュ、ゴッホ美、クレラー=ミュラー美といったところだろうか。
今年はボストン美が東京都美に日本画と西洋画を一緒にして名品を沢山貸し出してくれたし、今は世田谷美でマネやサージェントのいい女性画が展示されている。そして、来年はプラドのベラスケスが大挙して西洋美にやってくることが決まっている。
日本との相性がとてもいいボストン美、これまで運よく3回訪れる機会があった。最近の訪問は2年前、新たにできたアメリカ館で念願だったホーマーの絵をみることができた。また、お気に入りのサージェントの女性画と6点も対面できたのも楽しい思い出。
ボストン美にある古典絵画はシカゴ美同様、メトロポリタンやワシントンのナショナルギャラリーと較べると作品の数は少ない。だから、見ごたえのある絵はよく記憶に残る。フランドルの画家、ウェイデン(1400~1464)の‘聖母子を描く聖ルカ’もその一枚。宗教画のヴァリエーションがふえると聖人の名前も覚えるようになる。画家組合の守護聖人がルカであることをこの絵で知った。
キリストの哀悼をモチーフに描いた2枚の作品にも足がとまる。とくに強烈なイメージなのがクリヴェリ(1430年代~1494)、現在上野の森美で‘怖い絵展’が開かれているが、もし第2弾が‘悲しみの絵展’だったら、この絵が多くの人の目を釘づけにするかもしれない。
クラーナハ(1472~1553)の描くキリストの脱力感も涙を誘う。死せるキスストのまわりにいる人物がみせる悲しみの表情はそれぞれ違いがある。感情の昂ぶりが高くはないようにみえてもみな自分でだせるMAXの悲しみを表している感じ。