久しぶりに行った太田記念美、今‘菊川英山展’(11/3~12/20)を開催している。手にしたチラシに‘二百年前のエレガンス’とある。菊川英山(1787~1867)が描く美人画のイメージにぴったりのコピー。展示室に入る前から期待がもてそうな空気を感じた。
作品は全部で200点、前期(11/3~26)と後期(12/1~20)で半分づつでてくる。これほど多くの英山をみる機会がやって来るとは思ってもいなかった。たまたま美術館のHPをみて開催に気がついた。色っぽい遊女が手招きをしたのかもしれない。
はじめはいつものように靴をぬいで肉筆画を楽しんだ。東博でみた覚えがある‘雪月花図’は季節柄、右の雪の降るなかを歩いていく女性に目がとまる。さしている傘のデザインがじつにシャープ。
歌麿の美人画を彷彿とさせるのが‘江戸名所美人八景 上野暮雪’、雪の積もった寛永寺を背景に本を読む女性が大きく描かれている。歌麿が亡くなったあと、またうっとりさせる美人画が登場したので江戸っ子たちは大喜びだったにちがいない。
‘当風三美人’では反対側の座敷の様子がシルエットになっているところに歌麿の影響がみられる。廊下でリラックスする芸者の描き方は平板なのに奥の部屋を影絵でみせることで奥行きのある空間表現になっている。こういう浮世絵をみるとゴッホたちは痺れただろうなとつくづく思う。
英山独自の美人画になってきたなというのが‘花あやめ五人揃 廊下’、障子をあけて室内からでてきた遊女にはゾクッとするような色香がただよう。英山のこの遊女になぜか女優の沢尻エリカが重なる。真っ赤な口紅が色白の顔に映えるところもそっくり。