今年は浮世絵の展覧会はお休み、これは予定通りでその溜まった鑑賞エネルギーは来年1月2日から江戸東博ではじまる‘大浮世絵展’(3/2まで)にぶつけようと思っている。これは国際浮世絵学会の創立50周年を記念した特別展で、チラシのキャッチコピーには‘浮世絵の傑作、大集合’とあるのでかなり期待できそう。
こうした美術館の開館○○周年タイプの記念展の場合、主催者の気持ちの入り方がいつもの2倍以上あるから、集めてくる作品もいいものが揃うことが多い。国内の美術館や海外の浮世絵コレクションで名が知られた美術館から画集に載っている傑作がどのくらい集結するか、今から楽しみ!
そのなかに入っていることを強く願っているのは喜多川歌麿(1753~1806)の美人画と珠玉の狂歌絵本。この展覧会だけでなく、歌麿の大回顧展を東博で開催してくれないかとずっと思っている。2年前すごい写楽展があったから、次は歌麿展、再来年あたりにはあるだろうと勝手に妄想している。
狂歌絵本は‘画本虫撰’、‘潮干のつと’、‘百千鳥狂歌合’の三部作が有名。これまでどれも部分的にはみているが、全画はまだ目のなかに入ってない。これらが‘大浮世絵展’で展示されたら最高だが。描かれた貝やとんぼ、鳥の描写などをみるたびに歌麿は真に天才画家だなと思う。色っぽい美人画だけでなく、生き物や花、鳥でも緻密な筆使いで生き生きと描いている。
‘潮干のつと’の三角岩にくっついた貝や鮑の質感のリアルなこと、潮の香がする海辺に足を入れ思わずこの貝や蛤を手でつかみたくなる。‘画本虫撰’では雲母摺りにより輝く蜻蛉(とんぼ)の羽に目が点になる。蝶ととんぼが飛ぶ姿は自然ドキュメンタリーの映像をみているよう。
まだお目にかかってないのが‘百千鳥狂歌合’の鵜と鷺、画集でみてびっくり仰天なのが鷺の羽の描き方。白い羽毛が細い線の空摺りで表現されている。これをまじかでみてみたい。さて、来年夢が叶うだろうか?