エルミタージュに出かけたのは1999年のことだから、それまでにみたカラヴァッジョ(1571~1610)の作品はほんの片手くらいのとき。だから、ここに飾ってある‘リュート弾き’の驚くべき写実描写をみたときはカラヴァッジョが一生つきあっていく画家になるような気がした。そして、2年後岡崎美で日本ではじめて開かれたカラヴァッジョ展にめぐりあった。
カラヴァッジェスキのなかでとくに魅了されているのがジェンティレスキとホントホルスト(1592~1656)、ホントホルストに開眼したのはずっと後なのでその頃はその名前は知らない。そのため図録に載っている‘幼少期のキリスト’にそれほど心が揺れなかった。
画家のイメージが変わったのはロンドンのナショナルギャラリーで‘大祭司の前のキリスト’をみてから。それ以降‘幼少期のキリスト’への思いがだんだんつのっていったが、3年くらい前開かれたエルミタージュ美展に運がいいことにこの絵が含まれていた。まさに‘待てば海路の日和あり’。
エルミタージュにはダイク(1599~1641)の絵が20点くらいあるそうだが、‘自画像’が自慢の一枚かもしれない。こんなイケメンなら当時の美術界の貴公子みたいな存在だったにちがいない。そのさっそうとした姿は忘れようがない。
プッサン(1594~1665)の‘ポリュペモスのいる風景’はみたのかもしれないが記憶にまったくない。ダ・ヴィンチやレンブラントなどへ関心がいっていたのでみれどみず状態だったのだろう。2008年メトロポリタンですばらしいプッサン展に遭遇したので、次にエルミタージュを訪れるときは12点展示されているというプッサンにしっかりむかいあいたい。