ティツィアーノ(1485~1576)の兄貴分にあたるジョルジョーネ(1476~1510)を楽しむ機会が少ないので作品に出会うと特別な思いにかられる。エルミタージュではギョッとする作品が待ち受けていた。ちょっと勝手の違う‘ユーディット’、切り落としたホロフェルネスの首を左足で押さえ冷ややかにみつめている。これは一度みたら忘れられない。
1/21から東京都美ではじまる‘ティツィアーノ展’にナポリのカポデイモンテ美が所蔵する‘ダナエ’が出品される。これが最初に描かれたダナエで後に描かれたエルミタージュの別ヴァージョンは基本的な構成はプラドにあるものと同じ。ゼウスが変身した黄金の雨から等間隔で美女と老女を配するところがじつに上手い。このペアリングなら白い肌のダナエがいっそう魅惑的にみえる。
ウェイデン(1399~1464)の‘聖母を描く聖ルカ’にも少しだけちがうところがあるだけでほとんど同じにみえるものがボストン美にある。聖ルカはご存知のように画家たちの聖人、これとお目にかかったころはまだウェイデンに開眼しておらず、ルーヴルにあるファンエイクの絵によく似ているなと、いうほどの印象しかなかった。でも、今はこの画家のスゴさがわかっているので次回会うときはじっくりみるつもり。
エルミタージュにはクラーナハ(1472~1553)が2点ある。弓矢をもったキューピッドがとても可愛い‘ヴィーナスとキューピッド’と顔の描き方がウイーン美術史にあるユーディットと同じ‘女性の肖像’、驚くのはヴィーナスの肢体もつ異様さ、小さな顔とくらべて腰回りがなんとも大きく腿の太いこと。