今回日本にやって来た絵画、彫刻、素描など約200点のポップアート作品はすべてジョン・アンド・キミコパワーズのコレクション、ウォーホルと並ぶポップアートの大スター、リキテンスタイン(1923~1997)もしっかり蒐集しており全部で22点飾られている。日本へよくぞお越しいただきました!
リキテンスタインというとすぐ思い浮かべるのが少女の絵。4点もあるのだから頬が緩みっぱなし。このうち‘バーン’は一度みたことがあるが、‘鏡の中の少女’、‘空想’、‘船上の少女’ははじめての対面。1月フィラデルフィア美で1点みたので、これまでお目にかかったのはトータルすると8点。この少女のヴァージョンが一体何点あるのかわからないが、半分をこえたかもしれない。
‘鏡の中の少女’はとびっきりの笑顔に心がポップする。この笑顔に誘われて鏡の中に向かうが、左の太い黒の線で輪郭された黄色の色面がぱっとみて少女の頭にはみえない。黄色の帽子を被った海坊主のように思えてならない。リキテンスタインのトレードマークとなった点々、顔と指、そして爪に使われているが、赤い唇はこの絵のように塗りつぶすときもあれば点で描かれる場合もある。
展示室の最初に飾ってあるのが大きな‘ブルーン’はお馴染みのアメリカンコミックの吹き出し擬音語‘VAROOM!’音がある絵画はみているだけ活気づく。コミックの小さな一コマが赤や黒の線で構成された大きなアートに変わり爆発の生み出す強烈なエネルギーを表現している。
レジェの絵を彷彿とさせるのが‘化学による平和Ⅰ’、歯車が出てくるとチャップリンの映画‘モダンタイムズ’ではないが機械化された工業社会の断面がすぐイメージされる。この絵には白黒のみと白黒プラス青の2つのヴァージョンがある。
今回の収穫は陶器と真鍮と木を使ったオブジェ、リキテンスタインが絵画以外に‘セラミック スカルプチャー#12’のような陶器やオブジェも手がけていたとは知らなかった。3つのカップがぐにゅぐにゃと重なり合った‘セラミック’は赤や黄色が目に心地いいから自室に飾っておきたくなった。