ティツイアーノの‘バッカスとアリアドネ’(1520~23年)
日本で海外のブランド美術館のコレクションが度々開催されるが、北イタリア生まれのマンテーニャ(1431~1506)にお目にかかった記憶がない。代表作がある美術館ですぐ思いつくのはルーヴルとナショナルギャラリー、見る機会が限られている分一度目のなかにはいったものは強く印象付けられている。
‘ゲッセマネの園の苦悩’はこの絵の主役はキリストや眠っている弟子たちではなくこの舞台をつくっている岩の塊ではないかと思ったりもする。手前の岩が何層にも重なるフォルムはインパクトがあり、後ろのほうにもとんがり帽子のような岩山が連なっている。BSプレミアムの‘体感!グレートネイチャー’にでてくる地球絶景がふと頭をよぎる。
ヴェネツィア派の作品を多く所蔵しているのはもちろん本家のアカデミア美、ほかでいいのが揃っているのはルーヴル、プラド、そしてナショナルギャラリー、もうひとつあげるならミラノのブレラ美。ナショナルギャラリーで数が多いのがティツイアーノ(1506~1576)、傑作ぞろいだがキリスト物語でもギリシャ神話でも人物描写に動きがあるものが多い。
‘バッカスとアリアドネ’はバッカスの風になびく赤いケープが目に焼きついている。おもしろいのは劇的に出会ったアリアドネとバッカスの間にヒョウがいること。ヒョウやチーターは獰猛な動物というイメージがあるからドキッとする。
動きのある絵画構成で目を楽しませてくれるのがティントレット(1518~1594)、‘天の川の由来’はお気に入りの一枚。今は宇宙論に200%のめりこんでいるから、こういう絵には敏感に反応する。赤ん坊のヘラクレスが本当のお母さんでもないゼウスの妻ヘラのお乳をあまりに一生懸命飲むものだからその乳は天空に飛び散ってしまった。天の川がこうしてできた。
ヴェロネーゼ(1528~1588)というとルーヴルの大きな絵が有名だからヴェネツィア以外ではルーヴルが一番いいものをもっていると思いがちだが、ナショナルギャラリーのほうが作品郡としては充実しているというのが正直なところ。4点ある‘愛の寓意’や‘アレクサンドロス大王の前のダレイオスの家族’などが飾ってある部屋は圧巻!