ヤン・ファン・エイクの‘アルノルフィニ夫妻の肖像’(1434年)
海外の美術館をまわってみてつくづく思うのは絵画の世界は広く、すごい画力を持った画家が数多くいるということ。海外にそうたびたび出かけられるわけではないので、美術館を訪問する機会がめぐってきたときは狙った作品を全神経を傾けてみることにしている。そんな画家のひとりがヤン・ファン・エイク(1390~1441)。
ナショナルギャラリーにはファン・エイクのとっておきの絵がある。‘アルノルフィニ夫妻の肖像’、その絵解き話は美術史家のパノフスキーにたくさん教えてもらった。それもおもしろいがこの絵で視線が一番に向かうのは後ろの鏡、そこに人物が4人も映っている。鏡と同様、そのリアルな質感描写にびっくりするのが金属のシャンデリアと蝋燭、左に立つ商人の顔はちょっと気持ち悪い、だから可愛い天使のような奥さんばかりみている。
ハンス・ホルバイン(1498~1543)の‘大使たち’は事前にあることをインプットしておかないと後で悔いを残すことになる。それは絵の中央下に描かれている不思議な物体?前からみるとわからないが、画面の右から真横にみると、なんとドクロが現れる!こんなグロテスクなだまし絵を緻密な描写した人物や楽器のなかに挿入するのだからホルバインはかなりのアヴァンギャルド思考。
6月プラド美でみた大ボス展の余韻にまだ浸っている。‘嘲弄されるキリスト’もそこに展示されていた一枚。キリストを痛めつけられる場面がクローズアップで描かれている。こういう光景をみると気の弱い中学生の男の子が学校の片隅でいじめられているところをイメージする。
このボスと画風がよく似ているのがブリューゲル(1525~1569)の‘東方三博士の礼拝’、気になるのは聖母や三博士の着ている服のサイズがやけに大きくダボダボなところ。後ろに立っている男たちと比べてキリストも含めて前にいる5人は顔が非常に小さく描かれているので紙人形のような感じがする。