京都の醍醐寺はこれまで2度出かけた。みどころはなんといって国宝の五重塔、そしてもうひとつ有名なのが枝垂れ桜、でも観光シーズン真っただ中の春や秋の京都は避けているので実際の花見はまだ縁がない。それなのに奥村土牛(1889~1990)の‘醍醐’をよくみているせいでこの桜が身近に感じられるから不思議。
牛牛は桜の光景に心が和んだようで吉野の桜も描いている。名古屋にいたときこの桜がみたくで電車で出かけた。満開の時期よりすこし早かったが、ここが日本一の桜の名所だということが実感できた。一生の思い出。
天橋立の絵というと雪舟と川端龍子がすぐ頭に浮かぶが、もう一点いいのがある。麻田鷹司(1928~1987)が描いた‘天橋雪後図’、とても現代感覚にあふれる天橋立で雪の降った光景は深い寂寥感がただよい日本海のイメージとぴったりあう。
山口華楊(1899~1984)は動物画の名手、だが鷹や獅子といった勇ましい肉食系は登場せず、いたってやさいい牛や鹿や狐などが個性的に描かれる。その姿をじっとみていると内面がつかめるような気がしてくるが、これはまわりの場が背景として上手く溶け込まこんでおりモチーフが象徴的に浮き上がってくるから。