ティツィアーノの‘受胎告知’(1565年 サン・サルヴァドール聖堂)
ティントレットの‘キリストの復活’(1590年 アカデミア美)
イタリアのヴェネツィアには有名な美術館が2つある。ジョルジョーネやティツイアーノやティントレットらの傑作がずらっと並ぶアカデミア美と現近代アートのいい絵を楽しめるグッゲンハイム美。幸運なことにそれぞれ2回訪問したので、国立新美でアカデミア美名品展が行われるという情報が入ったときはこれはすごい!と思った。
今回の‘アカデミア美所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち’(7/13~10/10)は館蔵品に加えビッグなオマケがついている。それはサン・サルヴァドール聖堂にあるティツイアーノ(1485~1576)の大作‘受胎告知’。この絵は次のヴェネツィア旅行でターゲットにしていた作品、だからみるのを楽しみにしていた。この受胎告知はほかとくらべ大天使ガブリエル、聖母マリアともに動きのある人物描写が特徴。マリアの手を上にあげるポーズからは‘ええー、私身ごもったのー!?’という戸惑いの感情が伝わってくる。強く印象に残る受胎告知だった。
お目当てのティツイアーノをみたのであとはさらさらとみた。収穫はティントレット(1519~1594)の‘キリストの復活’この奥行きを感じさせる構図は2ヶ月前プラドでみた‘使徒の足を洗うキリスト’を思い出させる。場面を広くみせるティントレットの技はまさに天才的。
入ってすぐのところにあったカルパッチョ(1460~1526)の‘聖母マリアのエリサベ訪問’も嬉しい絵。アカデミア美にある作品でカルパッチョに開眼したので、今回再会できることを楽しみにしていたがこの1点しかなかった。明快な色彩と人物を巧みに配置する構成の上手さに感心しながらみていた。
ベッリーニ(1434~1516)もアカデミア美の目玉、今回やって来たのはチラシに使われている‘聖母子’、はじめてみたとき赤一色で塗られた顔と羽だけの智天使の姿にギョッとした。そのため、上のほうに気をとられ聖母子の印象が薄いなる。このように脇役が主役を食ってしまう絵にときどきでくわす。