カンディンスキーの‘ムルナウ オーバーマルクトの家’(1908年)
スペインのマドリードにはパリにように街の一角にいい作品を揃えた美術館が集中しているため、効率的な美術館めぐりが実現し心を打つ名画にも数多く遭遇することができる。
プラド美のすぐそばにあるティッセン・ボルネミッサ美は1992年に開館した。この美術館は古い画集ではスイスにある美術館として紹介されているが、鉄鋼業で財をなしたティッセン家の絵画コレクションはスペインの地で貴族の館を改築した新しい美術館におさまることになり新たな一歩を踏み出した。
5年前はじめてここを訪れたときはその充実した作品の質と量に200%圧倒された。外観のイメージはいわゆる邸宅美術館。邸宅に飾られているのは古典絵画を思い浮かべるが、ここにはそれだけでなくルーヴルやくロンドンのナショナルギャラリーではみられないアメリカ絵画やリキテンスタインのポップアートまで幅広く取り揃えている。
館内では終始テンションが上がりっぱなしだったが、事前に作った必見リストの確認はしっかり行った。残念ながら姿を現してくれなかった作品のひとつがヤン・ファン・エイク(1390~1441)の‘受胎告知’、6月にここを訪れることができたら真っ先にこの絵のところへ行きたい。
充実した印象派ではゴッホ(1853~1890)の絵が展示してなかったのは痛い。図版をみるかぎり色がはえており傑作の匂いがする。色の力にぐっと惹きつけられるのはゴッホだけではない。カンディンスキー(1866~1944)の‘ムルナウ オーバーマルクトの家’も緑や紫の強い色調が鑑賞欲を掻き立てる。
現代アートも驚くほどビッグネームの作品がある、ポロック、ロスコ、、デ・クーニング、、、そのなかでどういうわけかリキテンスタイン(1923~1997)の‘浴室の女’が隠れたまま。リキテンスタインの作品を1点でも多くみたいと願っているのでなんとしてもリカバリーしたい。