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Channel: いづつやの文化記号
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肉筆美人画なら勝川春章が一番!

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Img_0004     ‘美人鑑賞図’(1790~1792年 出光美)

Img_0002     ‘青楼遊宴図’(18世紀後期)

Img           ‘石橋図’(1783~87年)

Img_0001        ‘雪中傘持美人図’(1787~88年 出光美)

現在、勝川春章(1726~1792)の生誕290年を記念する回顧展が二つの美術館で行われている。出光美では肉筆美人画、、そして原宿の太田記念美では主に役者絵や美人画などの版画がたっぷりみられる。順番はまず期待の大きい出光へ行き、そのあと大谷記念へ向かった。

浮世絵美人画というと誰でも喜多川歌麿を真っ先に思い浮かべるだろうが、これは版画の話、一枚物の肉筆の美人画で誰が一番かというと葛飾北斎が若いころ師事した勝川春章、江戸っ子たちは歌麿と同じくらい春章の美人画にぞっこんだった。

では日本で春章のいい美人画を所蔵しているのはどの美術館か、すぐでてくるのは熱海のMOA、出光、太田記念、千葉市美、東芸大美、東博、あとはふだんはまずお目にかかれない個人コレクション、今回、MOA蔵の作品は一点もなかったが、ほかの美術館からはよく知られたものがほとんど結集している。そして個人がもっている隠れた名画がずらずらと並ぶ、まさにブランド美術館だからこそ実現する‘春章の美人画全部お見せします!’スタイルの展示。これは美術館に対する好感度が増す。

最初に飾られているのはみるたびにうっとりする‘美人鑑賞図’、日本には着物文化があるから模様に対する感覚がとても優れているが、春章は女性たちが身に着けている着物の柄をじつに精緻に描いているのでこれをみるだけでも楽しい。そしてこの着物によって女性は一段と美しい姿になる。

着物の生地の色にも魅了される。ボッティチェリの‘書物の聖母’にみられるラピスラズリを思わる鮮やかな青や強い赤、渋いうす紫と緑、そしてシックな黒、今回、春章がこの絵を描くときに参照した絵が解説されている。さて誰の絵か、みてのお楽しみ!

はじめてお目にかかる絵がたくさんあったが、収穫だったのはともに個人が所蔵している‘青楼遊宴図’と‘石橋図’、こういう絵をひとりで楽しめるなんてうらやましいい限り。切れ長の目がぐさっときた‘石橋図’にメロメロになり長くみていた。

冬の季節にみると白い顔がいっそう白く輝く‘雪中傘持美人図’に思わず足がとまった。手に雪の積もった傘をもち体を少し横に傾けるポーズはなんとも愛嬌がある。

春章の魅力を存分に感じとることのできる一級の美人画展、一生の思い出になりそう。


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