日本画家は長生きをするひとが多いが、横山大観(1868~1958)もそのひとり、亡くなったのは1958年だから90歳まで生きた。1940年に描かれた‘海山十題’は大観72歳のときの作品。最も惹かれているのが‘海に因む十題’のなかの‘波騒ぐ’。
波の描写が心をとらえて離さない絵が3点ある。大観のこの絵、もう2点は東山魁夷と加山又造、大観と魁夷の波のイメージはよく似ており、青緑と波しぶきの白が海のリアルな光景をよく表現している。
川合玉堂(1873~1957)の‘彩雨’は日本人の琴線に響く名作、水車がまわる農村の風景をみることは今ではとてもかなわないが、絵はありがたいもので穏やかな日本の田舎の光景を残してくれるので今流れている時間をふっと飛び越えてこのノスタルジックな世界へはいることができる。
棟方志功(1903~1975)の鯉の絵に大変魅了されている。たくさんの赤い鯉を画面いっぱいに泳ぐ屏風画‘御群鯉図’は大原孫三郎の還暦のお祝いに描かれたもの。体を曲げたりすーっと進んだりする動きは本物の鯉の姿そのもの。可愛くて元気のいい鯉、長いことみていた。
吉岡堅二(1906~1990)はトナカイに興味があったらしく、1940年に樺太へ行っている。ここにみられる躍動感あふれるトナカイのイメージはある絵を思い出させる。それはフランスのラスコーとかスペインのアルタミラの洞窟に描かれた牛、新感覚の日本画は太古の人類世界と強くコラボしている。