西洋画でも日本画でも女性が描かれた作品は自然にテンションがあがる。日本画で心が昂ぶるのは浮世絵にはじまる美人画、明治以降にこの分野で名をなしたのは京都の上村松園(1875~1949)と東京の鏑木清方(1878~1972)。
この二人の作品をとりあげるのはすごく気がはるし、名画を共有できる楽しさもわいてくる。松園の代表作‘序の舞’と清方の‘菊寿盃’はそんなことを強く思わせる作品。こういう絵をみるときは言葉がいらない。ただただじっとみるのがいい。
上村松園を西洋の画家で例えると、ルネサンスのラファエロ、松園の美人画はとにかく優しい、女性のもっている母性的なやわらかさ、心の清らかさが正直に表現されている。だから、いつもラファエロの聖母子をみているような気分になる。
清方の‘菊寿盃’は個人蔵、8年くらい間にお目にかかり200%魅力された。以来よくながめているが、本物をもっているコレクターが羨ましくてしょうがない。これは清方のベスト5に入る傑作とみている。
北沢映月(1907~1990)は京都出身の女流日本画家で松園に師事した。この‘祇園会’はちょっと気になる絵、本人が意識したかどうかはわからないが、部屋の描き方がマティスの‘画家の家族’(エルミタージュ)や‘赤いアトリエ’(MoMA)とよく似ている。
太田聴雨(1896~1958)の作品はあまり縁がなく、これまでみたのは数点にすぎない。この‘星をみる女性’は日本画の題材としてはとてもユニークなものだが、中村岳陵の都会の風俗を描いたシリーズと発想は同じ。着物を着ていても天体に興味を寄せる女性たちの気持ちがよく伝わってくる。