上野の森美で会期の終盤に入った‘肉筆浮世絵 美の競艶’(11/20~1/17)をみてきた。公開されているのは全部、肉筆画。その大半が美人画の肉筆浮世絵はシカゴのコレクター、ロジャー・ウエストン氏が蒐集したもの。日本には初登場で最初は4月大阪の市立美でお披露目された。
お目当ては5月に人気の美術番組‘美の巨人たち’でとりあげられた葛飾北斎(1760~1849)の‘美人愛猫図’、この絵が会期中ずっとでていたのでついつい出動が遅れた。怖い顔をした猫を手にもっている女性の描き方が誰かによく似ている。そう、師匠の勝川春章。だから、この美人画にはしっかり嵌る。
出口近くに飾ってあったのが河鍋暁斎(1831~1889)の骸骨がたくさんでてくる‘一休禅師地獄太夫図’、この絵で主役は太夫なのだろうが、視線が集中するのは太夫より骸骨の頭の上に片足をのせて踊っている一休、脇役が主役を食うことがときどきある。どうでもいいことだが、この一休の馬鹿踊りをみて、森繁久彌の‘社長シリーズ’によくでてくる宴会芸で笑いをとる三木のり平の演技を思い出した。
今回大きな収穫は菱川師宣(?~1694)と宮川長春(1682~1752)のみてて楽しい風俗画の巻物に出会ったこと。何年か前ボストン美から二人の風俗画が里帰りしたが、そのとき同様、画面のはじまりから終わりまでじっくりみた。
とくに熱心にみてしまうのが女性が身につけた着物とその柄。多種多様な柄があり、これだけをみてても飽きない。風俗画を華やかなもので仕立てている着物の数々、脈々と受け継がれてきた日本の着物文化のもつ豊かさにあらためて魅せられた。