BSプレミアムに‘浮世絵ツアー 江戸の四季めぐり’というおもしろい番組がある。案内役は落語家の二代目林家三平と若手女優、先月‘秋の巻’(1時間)が放送された。浮世絵に描かれた秋の風物詩で番組は構成されているが、今回登場したのは江戸の秋を彩った菊、ハゼ釣り、江戸友禅、松虫、そして浅草酉の市の名物、飾り熊手。
このなかで興味をそそられたのが菊。新宿御苑では毎年秋に‘菊花壇展’(11/1~11/15)が開かれているそうだ。盆栽展とかラン展、こうした菊展にとんと縁がない。でも、小さい頃は父親に連れられて毎年菊の品評会に行っていた。群を抜いて立派な菊には‘特選’と書かれた金のラベルが貼られていたことをよく覚えている。
いろいろな種類の菊が登場したが、目を奪われたのが摘芯という技術によってつくられた菊、一本の茎から何百という菊の花が咲いている。こうした菊のことは歌川国芳が描いた‘百種接分菊’で知識としてはインプットされていたが、実際に今も存在しているものをみたのはこの番組がはじめてかもしれない。
‘百種接分菊’がつくられたのは弘化2年(1845)のこと。菊の品種改良が進み、接ぎ木によって一つの茎に色も形も違う100種類の菊を咲かせるという極めつきの菊ができあがった。‘御門菊’、‘白鳳凰’などの名前が書かれた名札がいっぱい、見物人は皆驚きのまなこで食い入るようにながめている。
解説者として出演した名古屋の園芸家は自分の店で150種類の菊を咲かせていた。本物をみてみたい。番組のおかげで菊への関心が一気に高まった。来年の秋は新宿御苑へ出かけることにした。