1991年、朝日新聞が主催し‘昭和の日本画百選’が行われた。これがわが家の近代日本画のバイブル。ここに選ばれた絵をずっと追っかけているが、現時点で90点が目のなかに入った。コンプリートするのにあと何年かかるかは予想がつかない。
竹久夢二(1884~1934)は‘五月の朝’が選ばれた。この絵も‘黒船屋’同様、伊香保の記念館に出かけなければみれない。公開されるのは絵のタイトルにちなんで5月、予約をとって二度目の伊香保旅行をした。夢二が絵を描いたのは念願の外遊でアメリカに滞在していたときで、モデルはカルフォルニアでみつけた女性。だから目がぱっちりしている。
この絵がすばらしいのは配色がいいこと。襟と窓の外の空の色が同色の青系で、着物と画帖、そして縁側がぴったり合った明るい土色。そしてピンクがかった赤い帯。こうした色が女性の白い肌を浮き上がらせている。‘黒船屋’とともに魅了され続けている。
‘序の舞’といわれれば、日本画が好きな人なら上村松園の絵とピントくる。この絵が描かれるのは昭和11年(1936)のこと。その前に同じ題名で描いた画家がいる。鏑木清方門下の山川秀峰(1898~1944)、この美人画家の作品を多くもっているのは目白の野間記念館と福富太郎コレクション。
最近は足が遠のいているが野間記念館でいい気持にならせてもらったが、もっとも惹かれているのは東近美にる‘序の舞’。小顔の女性が舞う‘序の舞’も魅力いっぱい。ついじっとみつめてしまう。
菊池契月(1879~1955)の‘少女’は肖像画としてはユニークなポーズをしている。地味な着物を着た少女は膝を抱えて横向きに座り、顔をこちらにむけている。三角形の安定した構図なので少女の全身が自然と目に焼きつけられる。はじめて会ったときはほかの女性を連想しなかったが、今はすぐ女優の松下奈緒が頭に浮かぶ。