国立新美で開催されている‘貴婦人と一角獣展’(4/24~7/15)をみてきた。パリのクリュニー中世美にすばらしいタピスリーがあることはTVの美術番組などにより以前から知っている。だから、アバウトだがクリュニー美は次のパリの美術館めぐりをするときの候補のひとつに入れていた。
その追っかけが幸運なことに一気に早まった。貴婦人と一角獣、そしてライオン、うさぎ、猿、鳥、花の精たち御一行様が大挙日本へお出ましいただくことになろうとは。こんな夢みたいな話が実現するのだから日本の美術シーンは本当にスゴイ。
タイミングがいいことに昨日の日曜美術館はこの貴婦人と一角獣のタピスリーを特集、そのためか2階の展示室には大勢の人がいた。この6枚の大きなタピスリーに何が描かれているかは事前のインプットが効いているので、絵の中にすっと入っていける。描かれた‘五感’は序列の低い順番から時計まわりで飾られている、‘触覚’、‘味覚’、‘嗅覚’、‘聴覚’、そして‘視覚’、最後は‘我が唯一の望み’。
御一行様のなかで緯線が向かうのはやはり貴婦人と一角獣。貴婦人の顔は6面ともみな違う、お気に入りは‘味覚’の右手でお菓子をとり左手にとまった鳥にあたえている貴婦人。また、‘触覚’の一角獣の長い角を握っている貴婦人の横顔にも惹かれる。
一角獣とライオンがペアで描かれているが、ライオンには申し訳ないが一角獣ばかりみていた。体に量感がありとても愛らしいのが‘視覚’の一角獣。容姿度ではちょっと落ちる貴婦人のひざに前足をのせる姿が微笑ましい。
このタピスリーにはいろいろな動物が登場する。一角獣とライオンのほかには、うさぎ、猿、犬、子羊、狐、子こどもライオン、そして鳥はカササギ、鷺、ハヤブサなどなど。このなかでおもしろいことに気づいた。猿は6面全部に登場しない、なぜかある感覚にはまったく描かれてない。何度もみたがいなかった、さてどの感覚か?みてのお楽しみ!
最後の‘我が唯一の望み’はこれまでいろいろな解釈がされてきた。ここには第六感の‘心’が描かれている。貴婦人は宝石箱に首飾りを戻しているのか、これからつけようとしているのか、どっちだろう。それとこの‘心’の意味がどうつながっているのか、興味は尽きない。
久しぶりに読み応えのあるいい図録が手に入った。満足度200%の展覧会だった。