今週の月曜日まで開かれていた歌川国貞(1786~1864)の没後150年を記念した回顧展をみてきた。浮世絵の専門の美術館がてがけるものだから、質量は保障されている。予想通り後期だけでも沢山出ている。
広重や国芳のひとまわり年上の国貞、これまで回顧展は静嘉堂文庫で一回出くわしただけ。でも、東博の浮世絵コーナーで国貞はお馴染みの絵師、今回130点くらいが一気に上積みされたので国貞にも済みマークがつけられそう。
国貞の美人画はあまりぐっときてない、魅了されているのは役者絵のほう。靴を脱いでみる座敷のところにご機嫌な肉筆画‘暫’があった。腰をかがめた七代目市川團十郎の姿がばっちり決まっている。長い大太刀の形にもすっと視線がむかう。
今回の収穫は‘月の陰忍逢ふ夜 行燈’、しばらくみていたのは行燈の光の描写、はじめ黒の部分が何なのかよくわからなかったが、やがてこれは行燈からもれる光が後ろの屏風にあたっている様子を描いていることに気がついた。光があたり色が変わっているというわけ。この光の表現はすごく現代的なデザイン、200%参った。
地下の展示室にもはっとするものがあった。広重の東海道五十三次を絵のなかに取り込み宿場と関連する歌舞伎の配役とコラボさせている。これははじめてみた。お気に入りの‘庄野’だから目にも力が入る。
もう一点、国貞のイメージをくつがえす作品が現れた。三枚続の‘御あつらへ三色弁慶’、背景の絵柄がなんともモダン、上から青、赤、黒の格子模様が三層構造になっている。3人の人物は完全にこの模様に食われて、しっかり記憶にとどまらない。こんな豊かなデザイン感覚が国貞にあったとは!