オルセーに入館し作品をどういう順番でみていくか、これは美術館にやって来た回数により変わってくる。はじめてのときはガイダンス通りにまずは進んでみる。するとアングルの‘泉’が出迎えてくれる。この絵はつかみの作品としては最適。新規の美術館場合、入館してしばらくはとても緊張しているからこういう美術の本にのっている有名な絵がでてくるとちょっと気が鎮まる。
この裸婦の前では心拍数はあまり上がらないのに、すこし行ったところに飾られているカバネル(1823~1889)の‘ヴィーナスの誕生’では状況は一転、心がザワザワしてくる。ボッテイチェリの立ち姿とはちがい、ヴィーナスは波の上に寝そべり、顔を手で覆いながらこちらをみている。肌は抜けるように白くて気になる目つき、こんな官能的なヴィーナスなのに1863年のサロンで高く評価された。この人物描写と較べたら落選したマネの‘草上の昼食’のl裸婦は穏やかなもの。
モネやルノワールと仲のよかったバジール(1841~1870)が描いた集団肖像画‘家族の集い’は日本発登場、印象派が好きになる最初の段階ではバジールの存在は薄い。現地にあった作品でどれがバジールだったけ?というのが正直なところ。今回‘家族の集い’とアトリエの様子を描いたものがでている。バジールの顔は写真でみたことがあるが、アトリエにいるバジールはとても背が高い。2mくらいありそうだが、モネは実際は小さい男で、モネを脚色して大きめに描いたため自分がぐんと長身になったのかもしれない。
心が安まるのがモリゾ(1841~1895)の‘ゆりかご’、モリゾの姉がじっとみている赤ちゃんの寝姿がじつに川可愛い。最近、散歩の途中このくらいの年の赤ちゃんとで出会いあやしていたら、ニコッと笑ってくれた。こんな小さな赤ちゃんが愛想をよくしてくれると感激する。
12月横浜美で開催されるホイッスラー(1834~1903)の回顧展に大きな関心を寄せているが、そのプロローグといえる作品が今回国立新美に登場した。たしか以前日本でもお目にかかった‘画家の母’、真横の座像というのは珍しい肖像画。これにより存在感のある老母になっている。