ダ・ヴィンチの‘音楽家の肖像’(1485年頃 アンブロジアーナ絵画館)
ダ・ヴィンチの‘アトランティコ手稿 頭部の素描ほか’(1482~83年)
‘アトランティコ手稿 複数の弩を装備した歯車の素描’(1485~87年)
東京都美では今‘ダ・ヴィンチ展’(4/23~6/30)が開催されている。ダ・ヴィンチ(1452~1519)は西洋絵画史において特別の存在だから、たとえ作品が1点しかなくても出かけないわけにはいかない。今回の目玉は06年ミラノでみたことのある‘音楽家の肖像’と‘アトランティコ手稿’。
ミラノの名所観光のあと自由時間をやりくりして足を運んだアンブロジアーナ図書館・絵画館、忙しい日程のため館内にいたのは30分ほど。あわただしい鑑賞だっので1485年頃描かれた‘音楽家の肖像’の前にそう長くはいれなかった。印象深かったのはダ・ヴヴィンチしか描けないと思わせる金髪の細密な描写、顔の部分はすんなりダ・ヴィンチの作品、気になったのが黒と土色の衣装。筆が丁寧に入ってなく衣装の質感がない。
でもそのときは、それはどうでもよかった。なにしろ、この絵をみたことでダ・ヴィンチがコンプリートになったのだから。その感激で気分はプラトー状態。その絵と7年ぶりの対面、顔から下はやはりほかのダ・ヴィンチの作品とはちがうなという気がする。だから、カールした髪と内面まで強く伝わってくる彫りの深い顔を再度目に焼きつけた。
ダ・ヴィンチ派の作品はさらさらとみたが、2点でているルイー二(1480~1532)の絵の前にしばらくいた。ダ・ヴヴィンチをみているような気分になるのが‘聖家族と聖ヨハネ’。‘音楽家の肖像’1点だけで満足なのに、この絵がありダ・ヴィンチモードの濃度が濃くなったのはよかった。
今回この展覧会へ出かけたのはダ・ヴィンチの手稿のなかで最も有名な‘アトランティコ手稿’をしっかりみて、それが収録されている図録をゲットすることだった。展示されているのは1118の紙葉のうち22葉。‘頭部’や‘複数の弩を装備した歯車’などの素描を1点々じっくりみた。
8年前ビルゲイツが所蔵する‘レスター手稿’に出会い、このたびアンブロジアーナ図書館にある‘アトランティコ手稿’をみることができた。天才ダ・ヴィンチの世界に一歩々近づいていることがわけもなく嬉しい。