シュルレアリスム絵画の鑑賞は印象派同様ライフワーク、そのため熱い思いを抱いて海外の美術館を訪問したり国内の美術館で開催される展覧会に何度も足を運んできた。お気に入りはダリ、ミロ、マグリット、デルヴォ―。
2年前府中市美でデルヴォ―の回顧展が開催されたが、マグリット(1898~1967)については2002年Bunkamuraが世界中から質の高い作品を集めてきてくれた。このあとだいぶ時間が経っているのでまたどこかの美術館が大規模なマグリット展を実施してくれないかと密かに期待している。
1927年に制作された‘二重の秘密’は日本にやって来た。ぱっとみると左の人物は女性の感じがするが、じつは男性。視線はどうしてもとっつきやすいこちらのほうにいく、そして横の顔の半分がはぎ取られた人物をじっとながめる。
この部分は医者が行う喉の手術のイメージがしてちょっとグロテスク、またここに沢山の鈴があるのも不気味。こういう風にみていると左の顔はこのはぎ取られた部分であることを忘れ、二つを別々の存在ととらえてしまう。慣れてしまえば、そういう仕掛けに気づくが最初はそうみれなかった。
カッサンドル(1901~1968)が鉄道会社のためにつくったポスター‘北極星号’をみたときは大きな衝撃を受けた。この大胆な表現は今でも十分通用するほど時代を突き抜けている。この天才ポスター・デザイナーの回顧展がもし開かれたら初日に出かけるつもり。
アメリカの女流画家オキーフ(1887~1986)の作品に大変魅せられている。昨年はワシントンのナショナルギャラリーやNYのメトロポリタンでいくつもの傑作と対面し天にも昇る気分だった。MoMAにある‘青の抽象’は色は違うが火山の噴火を連想する。
ベックマン(1884~1950)の‘自画像’ははじめてボストンへ行ったときハーヴァード大の中にあるフォッグ美でお目にかかった。ベックマンへの関心はこの絵からはじまった。
昨年はブリジストンがカイユボットにスポットをあて、今年はバルテュスやヴァロットンの回顧展が開かれた。この流れに乗ってベックマンとかキルヒナーあたりにもチャレンジする美術館がないものか、帆だけは高く掲げておきたい。