チラシを手に入れたときから出かけることを決めていた東博の‘大覚寺展’
(1/21~3/16)。期待値が高かったのは障壁画がほとんど披露される
ことになったから。これは特別展のなかでも‘事件’といってもいいほどのビッ
グイベント。その障壁画は2度の訪問で記憶に強く残っているのは狩野山楽
(1559~1632)の‘牡丹図’と‘紅白梅図’の2つのみ。公開されるもの
を観たはずだから、ほかがどんな襖なのか見当がつかない。だから、収穫の
多い展覧会だというのは容易に想像できる。
果たして、最後の部屋に待っていたのは予想を上回る数の襖絵がずらっと並
んでいた。写真撮影OKというのだから、観る者の心に応える配慮に好感がも
てる。圧巻は全18面がすべて揃った‘牡丹図’。襖に最接近してみている
と、前と同じように安定感があり装飾性にも富む牡丹の姿に感動した。
そして、‘紅白梅図’にも思わず足がとまった。狩野派とはいえ永徳のような圧
倒されるダイナミズムに目を奪われるというよりは、金色の地に美しく映え
る優しい梅をみている感じ。この2つは通期の展示。
ほかはお目にかかったという記憶がないものばかり。山楽の‘松鷹図’は前期(1/21~2/16)の展示なので、見逃したくない方は早く出かけたほうがいい。松や鷹は小ぶりなので、永徳のパワーには勝てないが、その狩野派様式のうねりや鋭さの真髄はしっかりみてとれる。運が良かったのは琳派で名前を知っている渡辺始興(1683~1755)が描いた‘野兎図’(通期展示)。障子の腰板絵に登場したいろいろなポーズをとる兎たちに頬が緩んだ。
平安時代後期の傑作といわれる‘五大明王図’に遭遇したのも大きな収穫だった。空海の構想による東寺講堂像を範としており、不動明王,降三世明王、軍茶利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王どれも長くみてしまう。怖い顔をした明王と対面すると体と心がピリッとするから、ときどきこういう鑑賞体験は必要かもしれない。後期(2/18~3/16)も出動の予定。