鈴木春信の‘見立寒山拾得(墨流し)’(1765~70年 ギメ美)
浮世絵の展覧会で今年は春にビッグな特別展があった。それは東芸大美で開
かれた‘大吉原展’。目玉として登場した歌麿の‘吉原の花’と再会し、MAXの
感動をもらった。ほかにも収穫はたくさんあったが、とくに嬉しかったのが
広重の‘東都名所 新吉原五丁町弥生花盛全図’。追っかけリストに長く載せ
ていたのに、予想以上に縁のない時間が流れようやく思いの丈が叶った。
このように注目の浮世絵展が開かれるという情報が入ると必ず足を運び、
せっせと図録を積み重ねてきても、お目当ての本物との出会いがなかなか実現しない。だから、作品の数が多い浮世絵とのつきあいは長期戦と心得、辛抱強く対面の時を待つほかない。東芸大美に出品されるかなと期待していたのが菱川師宣(1618?~1694)の‘吉原風俗図。だが、今回もダメだった。
鈴木春信(1725~1770)は回顧展に運よく3回遭遇したので、2冊あるMy春信図録には相当数の作品が収まっている。ここにはまだお目にかかってないものも含まれており、いつかこれをという思いを募らせている。そのみたくてしょうがない作品の筆頭がギメ美にある‘見立寒山拾得(墨流し)’。料紙装飾の白眉‘本願寺本三十六人家集’を連想させるこんなすばらしい絵が春信にあったとは!同じ寒山拾得の見立絵を千葉市美が所蔵しているが、これもまだ縁がない。
‘風流艶色真似ゑもん’はついニヤニヤしてしまう枕絵シリーズ(全24図)だが、まだ3点しかみてなく、先は長い。全体像がみえてないが、頭巾姿の客と幼い遊女がでてくるこのヴァージョンに刺激をうけている。そして、東博の浮世絵平常展によく通っていた頃、いつかいつかと待ちわびていた‘三都太夫揃’もまだ姿をみせてくれない。コレクションの数はあまりに多いため、この絵まで注意がいかないのだろうか。