渓斎英泉の‘江戸名所尽 不忍池弁才天蓮看之景’(1830~44)
浮世絵が飾ってある東博本館の2階(10室)で外国人観光客と出くわす
のは今では見慣れた光景になった。熱心に写真を撮っているをよくみかけ
る。今回でている作品は8/6~9/8の展示で、いいのがたくさんあった。
最も嬉しかったのは喜多川歌麿(1753~1806)の見事な肉筆画
‘立姿美人図’。今年は東京芸大美で‘大吉原展’があり、歌麿が大当たりな
ので敏感に反応する。この美人画はMy歌麿図録では鑑賞済みになってい
るのだが、いつどこでみたかは忘れている。個人蔵のものがここでみれる
というのは東博に寄託されているのかもしれない。いいタイミングで巡り
あった。
数の多い葛飾北斎(1760~1849)でサプライズの一枚は‘牧馬’。
手前にいる馬を大きき描き、画面の上には6頭を小さく描き空間的な奥行
きを表現している。思わず足がとまったのは、これは過去にみてないなと
直感したから。図録を全部チェックしたが、この図版はでてこなかった。
大収穫!北斎の娘、応為(おうい)の肉筆画‘月下砧打ち美人図’は2017
年の‘北斎展’(あべのハルカス美)でもみたが、東博でみたのはこれがはじ
めて?
渓斎英泉(1791~1848)の風景画‘江戸名所尽 不忍池弁才天蓮看
之景’は空と池の藍色が印象深い。構図のつくりかたも秀逸で画面の隅から
隅までじっくり見ようという気にさせる。退廃的な遊女の絵を描く浮世絵
師というのが英泉に刷り込まれたイメージだが、風景も大変上手くそのは
っとさせる構成が視線を画面に向かわせる。
浮世絵を誰より多く描いた歌川国貞(1753~1806)は三枚続きの
‘夏の朝’と‘夏の交加’がすばらしい。男が舟をこぐ姿がダイナミックに描写さ
れている‘夏の交加’に魅了された。国貞の図録を3冊つくったが、どこにも
これは出てこなかった。こんないい絵に遭遇したのは運がよかった。これだ
から東博通いはやめられない。