海外に美術館を訪問したときはミュージアムショップで図録や絵葉書などを買
う時間も考慮に入れた上で、お目当ての作品ができるだけ効率的にみれるよう
館内を駆け巡っている。ショップで手に入れるのは特別展が開かれていれば
その図録(日本語版はほとんどない)。美術館がつくっているコレクションのガイドブックについてははじめてのとき日本語版をレジにもっていく。大きな美術館では日本語版は並んでいるが(たとえば、ルーヴル、オルセー、ナショナルギャラリー、ウフィツィ、プラド、エルミタージュ、メトロポリタン、MoMAなど)、シカゴ美、ボストン美、フィラデルフィア美はなぜか英語版しか販売されてない。
いろいろ特色のある美術館のガイドブックのなかで編集のセンスが良く、わか
り易い説明で情報が詰まっているものがある。それはロンドンのナショナルギ
ャラリーが2009年に発行した‘ビジターガイド 10のセルフガイド鑑賞ツ
アー’(日本語版 値段はたしか1500円くらい?だったような気がする)。
本当によくできているなと、感心させられる優れもので自慢の名画の数々が
切り口にそって5点ずつグループ分けされている。それを鑑賞ツアーの参考に
していくと、作品のことがよくわかるようになっている。
切り口は以下のようになっている。
‘傑作’、‘子どもと観る’、‘動物’、‘印象主義と後期印象主義’、‘色彩と技法’、‘衣裳’、‘神話と伝説’、‘キリストの生涯’、‘風景’、‘額縁’、
たとえば、‘ツアー3 動物’の最後にでてくるのがアンリ・ルソーの‘驚いた!’
解説のポイントは皆同じで4つ。
☆この絵の素晴らしさはどこに?
☆題材はなに?
☆どんな技法が使われた?
☆鑑賞ツアーに選ばれた理由は?
何度も読んでいると素人ながら西洋絵画通になれること請け合いである。
この本が気が利いているのはロンドンにあるほかの美術館まで紹介してくれること。まるで旅行ガイド本みたい。ナショナルギャラリーでは子どもたちが先生から絵の話をしてもらっている光景によく出くわすが、毎年、平均8万人の学童(2009年の頃)を受け入れている。これをみて東博でもこういうことを積極的に行えばいいのにと思うが、何年経っても小学生はいないし、中学生たちは個人々で作品をみている。日本の美術館も一般客に遠慮しないで子どもたちや学生の美術鑑賞をもっとサポートしてもいいのではないか。