‘ヴィオレット・ハイマンの肖像’(1910年 クリーブランド美)
数多く存在する西洋画の画家たちがいつごろ活躍したかを確かめるため、
生まれた年と死んだ年を画家列伝のファイルにせっせと書き込んでいる。
今日とりあげるルドンは1840年ボルドーで生をうけ、1916年に亡く
なった。同じフランスの同世代の画家にはセザンヌ(1839~1906)、
モネ(1840~1926)、ルノワール(1841~1919)、アンリ
・ルソー(1844~1910)がいる。
こういう画家たちが皆、画壇で勢いを増してくる印象派の絵を描いていたわ
けでなく、ルドンは主流の流れからそれてアニメーションのキャラクター
を連想させるような怪奇的な生き物をモノクロで描いたりして観る者を緊張
させた。そして、画業の後半には作風をがらっと変え鮮やかな色彩がだせる
パステルを使って美しい花の絵や幻想的な神話の世界をモチーフにして象徴
的な表現にむかって進んでいく。
作品の好みとしてはギョッとする一つ目巨人やクモが登場する絵より、やは
り鮮やかな色彩なのにどこか静かな雰囲気につつまれているパステル画のほ
うに関心が向かいあの絵もこれもみたいと強く願うようになる。狙っている
のはアメリカの美術館に結構多くある。一度日本で所蔵名作展が開かれた
クリーブランド美ではもっとも惹かれている‘ヴィオレット・ハイマンの肖像’
とギリシャ神話の題材にした‘オルフェウス’に心が寄っていく。描かれた人物
はぱっとみると女性のようにみえるがじつはルドンの息子だった‘アリ・ルド
ンの肖像’はシカゴ美に行ったとき必見リストに載せていたが、なぜか姿をみ
せてくれなかった。残念!
花の絵はオルセーにある‘長首の壺の草花’をランキング1位にしているが、
ボストン美にある絵もまだ縁がないプティ・パレ美蔵と同様に大変惹かれ
ている。ヨーロッパの美術館でルドンがすぐ浮かんでくるのはオルセーとオ
ランダのクレラーミュラー美。そして、アムステルダムのゴッホ美にも数点
ある。ここをまた訪問するときは深い青が目に沁みる‘輪光の聖母’との対面を
夢見ている。