‘オスカー・パニッツァに捧ぐ’(1917~18年 シュトウツトガルト美)
‘作家マックス・ヘルマン・ナイセ’(1925年 マンハイム美)
ディクスの‘大都会’(1927~28年 シュトウツトガルト美)
20世紀に活躍したドイツ出身の画家はすらすらと何人もでてこない。鑑賞
した作品の数が多かったせいで思い浮かぶのは青騎士のマルク、ベックマン、
キルヒナー、ノルデ。このほかでは本物との対面は少ないがその画風のイン
パクトが強いため、目に焼きついているのがグロッス(1893~1959)
とディクス(1891~1969)。二人は亡くなるのはグロッスのほうが
10年早かったが、ほぼ同時代を生きている。
風刺画家グロッスに強い衝撃をうけたのが漫画チックな人物描写。‘灰色の日’
にでてくる人物のように正面向きの丸顔の男性と横向きで動きのある人物が
縦長の画面で組み合わさっている。とくに目に突き刺さるのが赤い鼻と顔に
でている細い赤い血管。ヨーロッパを旅行しているとときどきこういう血管
が浮き出た人物にでくわす。社会を風刺する絵だから、この人物表現はすご
く現実感がある。
ドイツ南部のシュトゥットガルトの美術館が所蔵する‘オスカー・パニッツァ
に捧ぐ’は思わず凝視してしまうほどたくさんの人物が漫画的あるいは怪物幽
霊風に描かれている。左の斜め半分は連続する建物がまるでこの世の終わり
が来たかのように火につつまれぐらぐら揺れている感じ。‘作家マックス・ヘ
ルマン・ナイセ’はギョッとする肖像画。存在感がありすぎて、近くには寄れ
ない。
ディクスの古典的な三幅対の形式で描かれた‘大都会’はベルリンの歓楽さと
悲惨さが混ぜ合わさった刺激的なリアリズム表現にすごく惹きこまれる。これ
は一度みてみたい。‘サロンⅠ’はどこかグロッスの風刺画の匂いがする。右に
座っている3人の女では真ん中のくっきりした目鼻立ちの子が一番人気であ
ることは容易にわかる。