クレー(1879~1940)の大回顧展が1993年愛知県美で開催され
たときちょうど名古屋で仕事をしていたため、代表作の‘パルナッソスへ’を
みることができた。クレーとのつきあいはここからはじまった。それから
回顧展は川村記念美や東近美などで3回巡り合ったような記憶がある。最後
にみてから10年くらい経っている感じなので、来年あたりそろそろかなと
秘かに期待している。
今、頭にあるクレーの追っかけ絵画はスイスのベルン美、2005年の開館し
た‘パウル・クレー・センター’(ベルン)、そしてバーゼル美が所蔵するもの
に多く集中している。一番みたいのは‘ゼネツィオ(野菊)’。ぱっとみると
子どものお絵描きのよう。頬っぺたのピンクは女の子ならすごく上手に描く
にちがいない。これはクレー流の人物画なのだろうが、ポイントの目の印象
が人より猫とか梟のイメージ。これでずっと固定している。
スイス在住の個人コレクターがもっている‘黄色の鳥のいる風景’に魅了され
続けている。鳥の黄色をはじめとして画面全体が、豊かな色彩につつまれて
おり、森のパラダイスに紛れ込んだような気分になる。この絵と遭遇するこ
とがあるだろうか。クレーの天性のカラリストぶりが強烈に印象づけられる
のがドイツケルンにあるルートヴィヒ美が所蔵する‘大通りと脇道’。ここに
描かれているのはエジプト、ナイル河畔の輝く光景。クレーが生み出した
直球抽象画の爽やかなこと!是非みてみたい。
スイス美術館巡りの楽しみのひとつがパウル・クレー・センターの訪問。
お目当ては‘計画’と‘ドゥルカマラ島’。センターがオープンして2年後くらい
にコレクションの一部が日本で披露された。でも、残念ながらこの2点は
入ってなかった。‘計画’は画面の中央、線で描かれた人物が強い磁力を放っ
ている。そして、空想上のドゥルカマラ島で視線を釘付けにする太い黒線が
気にかかってしょうがない。