‘黒衣のアルバ女侯爵’(1797年 アメリカ・ヒスパニック協会)
‘アリエータ医師とともにいるゴヤ’(1820年 ミネアポリス美)
‘マリア・テレサ・デ・ボルボン’(1783年 ワシントン国立美)
‘三枚の鮭の切り身のある静物’(1808~12年 オスカー・ラインハルト・コレクション)
ヨーロッパやアメリカで美術館巡りをするときは出かけた人気の観光都市で
美術全般を頭に入れて動くことが多いが、ときどき画家を絞って忙しくまわ
ることもある。スペインのマドリードでは一度、ゴヤ(1746~1828
)の名画をずっと追いかけたことがあった。その成果は大きく、ゴヤ本に載
っている作品に次々と‘済みマーク’がついた。
有名な美術館にあるゴヤの絵はプラド美を筆頭にロンドンのナショナル・ギ
ャラリー、ルーヴル、NYのメトロポリタンとフリック・コレクション、
ワシントン国立美などで運よくお目にかかることができた。今、気になって
いるのはアメリカに3点ある。‘黒衣のアルバ女侯爵’は昔からみたくてしょ
うがない絵のひとつだが、所蔵しているNYにあるアメリカ・ヒスパニック協
会に足を運ぶと鑑賞できるのか、そのあたりの情報が皆無。協会のある建物
にどーんと飾ってあれば気軽に楽しめるが、ただもっているだけで非公開だと永遠に縁がなさそう。
ミネアポリス美にある瀕死の病に倒れた73歳のときの自分を描いた‘アリエ
ータ医師とともにいるゴヤ’に心を揺さぶられ続けている。広いアメリカで東
海岸や西海岸の主要都市とは違う内陸部の都市まで足をのばすとなると、
準備や段取りに相当なエネルギーがいる。さて、その機会が訪れるか。ワシ
ントン国立美には若い頃の薬師丸ひろ子を思い出させる‘サバ―テ・ガルシア’
という名画があるが、可愛い少女を描いた‘マリア・テレサ・デ・ボルボン’と
の対面はまだ果たせてない。
スペイン全土でみると、みたい絵はたくさん残っている。あくの強いフェルナンド7世の肖像画が鑑賞欲を強く刺激するのはマドリードの王立サン・フェルナンド美術アカデミーで遭遇した‘オレンジ戦争司令官としてのゴドイ’とどこか同じ雰囲気に包まれているから。こういうのは一度みると内面まで深く表現されているので、ずっと記憶に残りそう。あるTVの美術番組で知った‘三枚の鮭の切り身のある静物’はスイスで美術館をまわったとき、オスカー・ラインハルト・コレクションでのお楽しみの一枚になる。ダリがパンの精緻な絵を描いたのはひょっとするとゴヤのこの絵を意識したから?