ルノワールの‘アンリ夫人’(1876年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)
ターナーの‘雨、蒸気、速度ーグレート・ウエスタン鉄道’(1844年 ナショナル・ギャラリー)
ここ2年映画のDVDの蒐集に多くの時間と資金をつぎ込んできたが、求め
ていた作品がおおよそ揃ってきたので、今は新規作品の購入はペースダウ
ンさせもっぱらお気に入りの作品を繰り返しみて楽しんでいる。いい絵は
みる度に発見があるといわれるが、名作映画でもそれがあることに気づい
た。
今週は定番のMy図録づくりに精を出しているとき、森繫久彌主演の喜劇
‘社長シリーズ’の最初のころの作品を流していた。喜劇映画は笑いが絶え
ないので作業の効力がぐんと上がる。1956年に登場した記念すべき
第1弾‘へそくり社長’ははじめてみたときは気づかなかったシーンが目にと
まった。小林桂樹(秘書)の恋人司葉子(同僚)の自宅の部屋に掛けられ
ていたカレンダーにルノワールの女性画が使われていた。モノクロ映画だ
がワシントン・ナショナル・ギャラリーにある‘アンリ夫人’であることはす
ぐわかった。監督や美術担当がルノワール好きだったのだろうか。
別の監督が2年後に撮った‘社長三代記’でも喜劇映画にこの絵がでてくるの?
という場面があった。三代目社長を演じる加東大介のデスクの後ろをみると
なんとターナーの‘雨、蒸気、速度ーグレート・ウェスタン鉄道’が飾られて
いる。これも前はまったく気づかなかった。ほかの作品で川合玉堂の絵が
でてきたのは記憶しているが、有名なターナーの代表作が選ばれるとは。
これには200%驚いた。
今年は小津安二郎監督の映画を2本追加購入した。‘東京物語’(1953年)
同様、世界的に高く評価されている‘晩春’(1949年)と1962年に
製作された‘秋刀魚の味’。‘晩春‘は能舞台を堪能させてもらったが、‘秋刀魚
の味’では字幕意匠装画をてがけた橋本明治の‘石橋’が笠智衆の友人の重役の
部屋に掛けられていた。この絵ができたのは1961年なので一年後に映画
で採用されたことになる。小津安二郎は橋本明治の絵が気に入っていたのか
もしれない。
今年も拙ブログにおつきあいいただきありがとうございます。
皆様良いお年をお迎え下さい。