クノップフの‘見捨てられた町’(ブリュッセル ベルギー王立美)
ガレ(1846~1904)の作品を十二分に堪能できたのはやはり2005年江戸東博で開かれた‘ガレ展’、前年諏訪湖のほとりにある北澤美で‘フランスの薔薇’や‘ひとよ茸ランプ’といった名品をみていたからこの回顧展はだガレに最接近するまたとないチャンス、おかげでガレワールドを満喫することができた。
海外の美術館からもやってきた名品が並ぶなかで、一際オーラを放ってきたのが最晩年につくられた‘手’、これは本場のオルセーでみたことがなかったので、貴重な鑑賞体験となった。この手はただの手ではない、手のフォルムが波のようにもみえるし、指のところには貝や海藻がこびりついている。これは何を意味しているのか?
会場では照明を落としてあったので、神秘的な美しさを感じると同時に不気味な手にも思えた。夜暗い部屋でこれをみたらちょっと怖くて眠れなくなるかもしれないと正直思った。3年前、‘美の巨人たち’でこの‘手’はとりあげられ、創作にまつわる話は頭に入った。ガレは習作を2点つくっており、これれは今ナンシー美に所蔵されている。この美術館はいつか行ってみたいところ、訪問が実現したら習作の‘手’にもあえるだろう。
今秋開かれる展覧会で◎をつけているのが‘ホドラー展’(10/7~1/12 西洋美)、どの作家でも回顧展を2度体験するのが理想、ホドラー(1853~1918)については7年前オルセーで開かれた回顧展に運よく遭遇したので1ラウンドはこなした。だから、西洋美のものをみると喜び二段重ねとなる。
ホドラーは春をテーマにした作品を合計4点描いており、オルセーでみた‘春Ⅱ’は2番目の作、最初と3番目のものは幸運にも日本で縁があった。描かれているのは思春期をむかえた若い男女、少女は目をつぶり横向きに座っており、若い男は裸姿でロダンの‘考える人’風のポーズで正面をみている。クリムトの‘接吻’の青春版のような画面構成に大変魅せられた。
ベルギー象徴派のクノップフ(1848~1921)はとても気になる画家、Bunkamuraがこの画家の回顧展をやってくれないかと密かに期待している。無理?チャレンジして欲しいのだが、‘見捨てられた町’はタイトルのイメージが深く感じとれる作品、王立美には2度でかけたのにこの絵には縁がなかった。次回の楽しみのひとつ。