わが家のある展覧会図録で数が多いのは西洋絵画ではモネ、ルノワール、
ゴッホ、ピカソ、ダリ、日本画・洋画では横山大観、上村松園、鏑木清方、
竹久夢二、東山魁夷、岸田劉生、棟方志功。東近美で開催されている‘棟方
志功展’(10/6~12/3)をみたのでまた一冊増えた。東近美が実施す
る棟方展だから期待値がぐっと上がっていたが、果たして‘決定版棟方志功
!‘だった。驚いたのは観客のなかに多くの外国人がいたこと。外国人
なら浮世絵専門館の太田記念美というイメージだったが、新しい入場者の
光景が東近美でも出現している。
世界にムナカタの名前を轟かせたのが代表作の‘二菩薩釈迦十大弟子’。いつ
みても感動する。個性を際だたせた弟子たちの表情やポーズが精神的なも
のを力強いフォルムにして完成させたという感じ。今回の大きな収穫が
棟方が疎開先の富山県の福光で描いた肉筆画‘華厳松’、日曜美術館にこの墨の濃淡と暈しが心を打つ襖絵が紹介されたので俄然本物との対面に気がはやった。これまで肉筆なら大原美にある鯉の絵が目に焼き付いていたが、これも長く記憶に残りそう。
展示会場の最後にでてくる大作‘花矢の柵’と再会できたのは大きな喜びである。本物をみるのはこれで3度目、青森県美を訪問したとき遭遇し息を呑んでみたが、2012年には運よく平塚美にも出品され、今年は東近美で再会。地の黄色がモチーフを引き立て、明るい印象を画面全体に与えている。4人の騎士が乗る馬の体にリズミカルに彫り込まれた模様をみてふとある西洋画家を思い浮かべた。それはシャガールの絵。たとえば、代表作の‘私と村’では牛の顔の中に乳しぼりされている牛がまた描かれている。‘飛神の柵’でも男神、女神の顔には目や鼻、口のほかに花や星のようなものが装飾的に描き込まれている。
‘弁財天妃の柵’も棟方展には欠かせない重要なピース。白いほっぺの赤が女性の魅力を輝かせている。この美人画の大首絵は包装紙の図案にも使われており、横浜のカツレツの名店‘勝烈庵’は棟方に依頼して店名や包装紙のデザインをつくってもらった。横浜市営地下鉄の関内駅でいつも勝烈庵の弁才天妃をみるので棟方とは頻繁に出会っている。