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Channel: いづつやの文化記号
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デイヴィッド・イーグルマン ‘あなたの脳のはなし’!

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Img_0002_20231101224301  アングルの‘シャルル7世の戴冠式のジャンヌ・ダルク’(1854年頃 ルーヴル美)

ハヤカワノンフィクション文庫は講談社の‘ブルーバックス’同様、サイエンス
に興味がわき出すとつい何冊も買い込んでしまう。脳関連の本ではいいのが
2冊ある。デイヴィッド・イーグルマンの‘あなたの脳のはなし 神経科学者
が解き明かす意識の謎’(2015年 早川書房)と‘あなたの知らない脳-
意識は傍観者である’(2011年 早川書房)。今年、先入先出法にしたが
って最初に出版された‘あなたの知らない脳’をまず読み、そのあと‘脳のはなし’
に進んだ。

どちらも脳のしくみや心、意識のことがよくわかる名著だが、脳のことは
初歩的な知識がない人は‘脳のはなし’から読み進めるほうがいいかもしれない。
この本は著者が一般視聴者に向けて行ったTV講義(1話1時間ずつ6話)
の書籍版で、写真やイラスト、漫画などがたくさんでてきて用語集までついて
いるので脳のことがトータルでわかるようになっている。アメリカでベスト
セラーになった出世作の‘あなたの知らない脳’同様、この本も本当にわかりや
くて、おもしろい。情報エンターテイメントを味わえてためになるのだから
一読の価値がある。親しい友人や知人に薦めている。

歴史と美術が好きな人にとっては興味をそそる話がでてくる。‘脳のはなし’で
はロシアの画家、イリア・レーピンの描いた有名な絵‘思いがけぬ帰宅’が被験
者にみせてあとで何が描かれていたかを質問する実験に使われている。そして、‘あなたの知らない脳’には‘てんかん’の話があり、あのジャンヌ・ダルクが登場する。

その部分を引用すると、‘てんかんの発作が側頭葉の特定のスイートスポットに集中している場合、本人は運動発作を起こさないが、その代わりにもっと微妙な発作を経験する。その影響は認識発作のようなもので、特徴的なのは人格の変化、異常な信仰心、外界の存在についての錯覚、そしてしばしば神の声を聞くことである。歴史上の預言者、殉教者、そして指導者の一部は、側頭葉てんかんを患っていたようである’。

‘ジャンヌ・ダルクのことを考えてみよう。16歳の少女が百年戦争の流れを変えることができたのは、自分が大天使聖ミカエル、聖カタリナ、聖マルガリタ、聖ガブリエルの声を聞いていると信じていたからだ。彼女は自分の経験をこう説明している。「13歳のとき、自制を助けてくださる神の声が聞こえました。最初は恐怖を覚えました」。のちに彼女は報告している。「神が行けと命令なさったのですから、私は行かなくてはなりません」’。


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