10年前、長野県の諏訪湖のほとりにある北澤美を訪問した。お目当てはガレ、それまでガレ(1846~1904)の名前は知っていたが、そのガラス作品をみる機会に恵まれず、少しまとまった形でみたのは広島にいるときでかけたウッドワン美のコレクションのみ、だからガレの名作を沢山所蔵している北澤美は憧れの美術館だった。
作品の前では1点々唸り声をあげていたが、とりわけ感動したのがガレが亡くなる3年前に制作した‘フランスの薔薇’、美しいピンク色の花器に強く心を打たれた。こんな傑作が日本の美術館にあるのだから、日本のコレクターのガレに寄せる思いというのは半端ではない。中央高速を久しく走ってないので、また諏訪湖旅行をしてみたくなった。
ガレの命がつきようとしていたころ、パリのデザイン界の寵児になっていたミュシャ(1860~1939)は1901年に装飾パネル‘つた’と‘月桂樹’を描いている。つたの角々したフォルムと流麗な曲線で表現された髪の毛や衣装の肩あたりの模様はうまく溶け合い、女性の美をいっそう引き立てている。
クリムト(1862~11918)の‘ユディットⅠ’にはじめてお目にかかったのは日本の美術館、20年くらい前、池袋にあったセゾン美(現在は無い)、ここで大クリムト展があり、代表作の‘接吻’など魅了されるクリムト作品がずらずらっと展示された。‘ユディットⅠ’もその一枚、眩いばかりの黄金装飾に心を奪われていたので、右下の半分だけみえるホロフェルネスの顔はよく覚えていない。
カンディンスキーとともに抽象絵画の分野で最も魅かれているのがチェコのクプカ(1871~1957)、この画家にのめりこむきっかけとなったのが1994年に愛知県美で開かれた回顧展、このころ名古屋で仕事をしており運よくこの展覧会に遭遇した。‘馬車の窓からの眺め’はクプカ初期の作品、アールヌーヴォー調の装飾とシュールでファンタジックな世界に思わず足がとまった。今でも忘れられない一枚。