Quantcast
Channel: いづつやの文化記号
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4071

美術で‘最高の瞬間‘! 富本憲吉

$
0
0

Img_20230904225401    ‘色絵金銀彩羊歯模様八角飾箱’(1959年 東近美)

Img_0004_20230904225401    ‘色絵金銀彩飾壺’(1953年 京近美)

Img_0001_20230904225401    ‘色絵赤更紗模様飾皿’(1941年 富本憲吉記念館)

Img_0003_20230904225501    ‘色絵飾筥’(1941年)

Img_0002_20230904225501    ‘色絵金銀彩四弁花模様蓋付飾壺’(1960年 東近美)

富本憲吉(1886~1963)のやきものは連続する模様の美しさが最大
の魅力。その模様は伝統的な模様を模倣するのではなく草花の写生にもとづき
自ら独自の模様を作り出した。‘模様から模様を造らず’という名言を残してい
る。憲吉の作品をはじめてみたのは東近美にある‘色絵金銀彩羊歯模様八角飾
箱’。大変華麗な金銀彩である。模様のモチーフは中心から四方に広がる
4つの葉からなる羊歯。これがぴったり菱形におさまり赤地に金銀彩が施さ
れている。完璧という言葉が相応しいほど驚かせるこの羊歯模様の表現はまさに神業的。

‘色絵金銀彩飾壺’は羊歯模様をおもちゃの風車のように動きをつけたもの。思わず足がとまる。この文様にはいろいろなヴァリエーションがあり、京近美には菱形を4つ使ってさらに大きな菱形をつくり、金銀をそれぞれ横に連続させる壺もある。‘色絵赤更紗模様飾皿’では憲吉がよく使った模様が皿の表面を埋め尽くしている。これは歌人藤原定家の名を負う定家葛という蔓草で本来は白い五弁花だが、連続模様にするために四弁を考案している。プロペラのように捩じれを表現するフォルムになっている。この綿密な絵付けを43枚仕上げている。

憲吉はデザインのセンスが抜群に良く、色彩とデザインが心を晴れやかにするものを制作している。それが魅了され続けている‘色絵飾筥’。瓢箪の形をした壺からでた花は黄色の地に明るく浮かび上がっている。2007年、世田谷美で開かれた回顧展で遭遇したときは黄色の輝きにびっくりし、声を失ってながめていた。憲吉は天性のカラリスト! 以来、ときどき図録を引っ張り出してこの飾筥と対面している。

東近美が所蔵する‘色絵金銀彩四弁花模様飾壺’はとても見栄えのする作品。印象深いのは金彩で輪郭された四弁の花の白。壺の口辺の白と蓋の端の白と良いバランスで銀彩の地に美しく映えている。模様が大きいため四弁が強いインパクトをもって目にとびこんでくる。忘れられない壺である。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4071