京都出身の彫刻家八木一夫(1918~1979)はおもしろい名前のつい
た作品によってイメージができている。オブジェ‘ザムザ氏の散歩’はメキシ
コや南米の古代文明の遺跡から出土したようなものがどうして人の散歩にな
るのか? 戸惑いがぬぐえないままみているとジャコメッティの作品が
かぶってくる。タイトルに似たところがある。たとえば、‘髪を束ねた女性立
像’、‘ヤナイハラの頭部’、‘眠るヤナイハラ’。八木はジャコメッティを意識し
たのだろうか。
前衛表現のオブジェの最たるものが‘黒陶 環’。こういう作品をみるときは
陶芸なのか抽象彫刻なのかは横に置いて、オブジェとして楽しむことにして
いる。これまで体験したなかでこれと黒つながりで頭に浮かぶのがイサム・
ノグチの‘エナジーヴォイド’、そして、ひび割れでぐにゃっとなった部分から
イタリアのポモドーロの‘球のある球体’が連想される。
広島県美の平常展示にお馴染みになった‘発芽の様相’は、小さい頃の記憶で
エンドウ豆を水に浸しているとこの舌をペロッとだしたような形になること
を思い出す。‘ザムザ’とちがってタイトルと作品のイメージがピッタリ合って
いる。
‘中島晴美(1950~)は岐阜県恵那市生まれの陶芸家。‘苦闘する形態V-1’
に東近美でお目にかかったとき、たんこぶのような丸いでっぱりをたくさん
くっつけて形成された柔らかい形とその白の表面に描かれている青の大小の
水玉模様から、この作家はてっきり女性だと思った。でも、名前とは逆の
現代アート感覚の表現にエネルギーを注ぎ込んだ男性だった。2007年に
つくられた‘反転しながら増殖する形態0701’はその形態が複雑に進化し、
広い宇宙のどこかに存在する未来生物を想像させる。