デパートで開催される展覧会にはいろいろ思い出がつまっている。東京では
日本橋三越、日本橋高島屋、銀座松屋、そして横浜ではそごうと高島屋にな
んども足を運んだ。童画で知られる中島潔(1943~)の回顧展に運よく
遭遇したのは日本橋三越。2003年の‘中島潔が描く金子みすゞ’、2005
年の‘中島潔が描くパリそして日本’が強く記憶に残っている。
‘大漁’は26歳でこの世を去った童謡詩人金子みすゞ(1903~1930)
のもっとも有名な詩を中島が絵にしたもの。大漁のイワシでびっしりうまっ
た画面に女の子が立ちイワシの命に思いをはせている。詩と絵が完璧にコラ
ボしている。息を呑んでみていた。
☆大漁 朝焼小焼だ
大漁だ
大羽鰮の
大漁だ
濱は祭りの
ようだけど
海の中では
何萬の
鰮のとむらひ
するだろう。
明るい色彩につつまれた‘お花だったら’も大変惹かれる作品。お花畑の感じ
がよくでており、金子みすゞの詩にすっとはいっていける。
農村の風景のなかにいる少年少女を描いた中島の絵には弱いものへのいたわ
りや自然への畏敬が感じられる。最近よくみている古い日本映画にでてくる
昔の日本の風景と重なり心が安らぐのが‘夏のバス停’。バスの行先は唐津と
なっているのは、中島の故郷は佐賀県の唐津だから。男の子も女の子の顔は
どこかやさしくほっこりしているが、思わず足がとまったのが‘風の色’。大
きく曲がった木に登って休んでいる二人と犬の姿につい頬がゆるむ。‘色染む
頃’はお地蔵さんのすました顔がかわいい。中島潔に乾杯!