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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間‘! 狩野芳崖

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‘悲母観音図’(重文 1888年 東芸大美)

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‘仁王捉鬼図’(1886年 東近美)

Img_0002_20230427221701    ‘鏻姫像’(1860年 下関市立長府図書館)

Img_0004_20230427221701     ‘懸崖山水図’(1882年 下関市美)

Img_0003_20230427221801     ‘福禄寿図’(19世紀 毛利博)

明治以降に活躍した日本画家の横山大観や菱田春草らの前に、彼らの師匠格的
な存在だった画家が二人いる。明治維新(1868年)の40年前、山口県の
下関に生まれた狩野芳崖(1828~1888)とその7年後、江戸で生まれ
た橋本雅邦(1835~1908)。大観と違ってともに開かれる回顧展は
とても少ない。だから、これまで遭遇したのは芳崖は2回、雅邦は1回だけ。

芳崖を多く所蔵しているのは東芸大美と下関市美。広島で仕事をしているとき
下関市美にでかけ、びっくりするほど綺麗なお姫様を描いた‘鏻姫(れいひめ)
像’や鋭利に尖った水晶の結晶が渓谷から突き出ているようなイメージが強く残
る水墨画‘懸崖山水図’に魅了された。これから芳崖とのつきあいがはじまった。
別の機会に山口県の防府市にある毛利博で雪舟の‘山水長巻’(国宝)にお目にか
かった際、オマケに出品されていた吉祥画‘福禄寿図’とも縁があった。

東芸大美ではたしか4,5年くらいの間隔で代表作の‘悲母観音図’が公開される。そのため、長い日本画鑑賞歴があるものの実物をみたのは2008年の回顧展を含めて4回しかないが、いつもこの悲母観音に感動している。均整のとれたプロポーションで描かれたふくよかで神々しい姿は本当に美しい。生まれた赤ん坊を慈愛に満ちたまなざしで見つめる観音の優しさが心を打つ。

もうひとつ芳崖で‘最高の瞬間’!なのが‘仁王捉鬼図’。フェノロサの指導でチャレンジした西洋絵具の色彩効果がはっきり出ており、透明性のあるうすピンク、緑、青が視線を釘付けにする。そして、戯画チックに表現された仁王と鬼もおもしろい。あの芳崖がこんなユーモラスな絵を描いたのか! これは嬉しい戸惑いである。はじめてお目にかかったときは個人蔵になっていたが、現在は東近美の所蔵。これはグッドニュース、定期的に展示されるだろうから、前よりは格段に楽しみが膨らむ。


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