国立新美から歩いて5分くらいのところにあるサントリー美(東京ミッドタ
ウンの3階)では先月の8日から‘木米展’が開催されている(3/26まで)。
やきものと絵画の二刀流で注目をあつめた木米(1767~1833)の
回顧展があるという情報を得たときはサントリーらしいなと思いながら、手
に入れたチラシをじっとみた。そこに出動を即座に決定づける絵画が載って
いた。
それが‘兎道朝潡図’(うじちょうとんず)。重文に指定され個人が所蔵する
ものだが、このコレクターは倉敷の大原家という情報も入ってきた。だが、
これが本当なのかはわからない。じつはこの絵は以前から手元にある美術本
に載っており、すごく気になっていたので鑑賞欲が強く刺激された。展示は
3/1~3/26までとなっているので、でかけるタイミングをこれに合わせ
ていた。3/12から大相撲がはじまるため、その前に国立新美のルーヴル
美展とセットでみることにした。でも、うっかり大失敗をやらかしそうにな
った。3/7(火曜日)に行く予定だったが、前の日にこの2館は火曜日が
休館であることを思い出した。美術館とのコンタクトの回数が少なくなると
脳がぼやっとしており、休館日がステレオタイプ的にすっと月曜となってし
まうのである。こういうところにコロナ禍の副作用がでている。
この絵に描かれているのは宇治の朝景色で右下に平等院鳳凰堂、左に宇治橋
が配され画面中央に宇治川が流れている。一見してすぐに思い浮かぶのが
池大雅の文人画。淡い青と赤がとても美しいところは大雅と重なってくる。
ところが場面の設定は日本だが、舟に乗る人も橋を渡る人も中国の高士の姿
をしている。これも日本の実景を中国におきかえる大雅の描き方を踏襲して
いる。木米には絵画は余技だったが、才能があるのでこんないい絵が描ける。
本当にすばらしい!
お目当ての絵をみたので、あとは陶工、木米の技をさらっとみた。重文の
‘染付龍濤文堤重’と‘交趾釉荒磯文急須’には目が慣れているが、はじめての‘色
絵雲龍波濤文火入’、仁清を連想させる‘色絵七宝文茶碗’の前では思わず足が
止まった。さらにオマケについていた仁阿弥道八や永楽保全の作品も長く
みていた。