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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間’! 迫真の肖像彫刻

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  国宝 ‘鑑真和上坐像’(763年 唐招提寺)

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  国宝 運慶の‘無著立像’(1212年頃 興福寺)

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  国宝 運慶の‘重源上人坐像’(重文 13世紀 東大寺)

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  ‘平清盛像’(重文 13世紀 六波羅蜜寺)

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  ‘北条時頼坐像’(重文 13世紀後半 建長寺)

唐招提寺の御影堂に安置される鑑真和上の像はこれまで運よく2度みること
ができた。大変有名な肖像彫刻であるが、唐招提寺で公開されるのは鑑真の
命日(6月5日)をはさんで3日と決まっているので、奈良では縁がなく美
術館で開かれた特別展で対面した。これは奈良時代につくられた日本最古の
肖像彫刻で麻布を漆で固める脱活乾漆の技法が使われている。そのため、
瞑想する鑑真が目の前にいるように錯覚させる見事な写実表現が生み出され
ている。よくみるとまつ毛、眉毛が一本々リアルに描かれており、髭にはと
ころどころ広いものがまじっている。もう一回くらいはお目かかりたい。
果たして、その機会がやってくるだろうか。

人物が生きているかのようなリアリティー全開の肖像彫刻が登場するのは武
士が貴族にとってかわった鎌倉時代。そのど真ん中にいたのが天才仏師、
運慶(1151~1223)。興福寺にある‘無著立像’はもっとも印象深い
彫刻。大リーグのヤンキースで活躍し、現在は楽天に在籍している田中投手、
‘マー君’の顔にそっくり。あまりに似ているのでこちらばかりに鑑賞のエネル
ギーがとられ、隣にいる弟の世親像がおざなりになってしまう。

そして、源平合戦で焼けた東大寺を再興した重源上人の坐像についても、
本人そのものという感じ。一見すると田舎のお爺さん風の風貌は親しみが湧
き、つい体のことを聞いたり世間話でもしようかという気になる。彫刻は立
体の芸術だから、観る者と作品との間の物理的な距離は人と人のコミュニケ
ーションがそのまま反映される。こういうリアルな肖像彫刻はずっとながめ
ていられる。

六波羅蜜寺にある‘平清盛像’は実在感のある面貌表現になっている。清盛が
実際にこんな顔をしていたかは?だが、この人物とうけとってもいいのかも
と思わせるところが写実表現の力。同じく北条時頼の像もとてもいい出来ば
え。温和な表情だが、意志の強そうな気迫がみなぎっているところにすごく
惹かれる。


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