やきものが好きな人なら中国・南宋時代につくられた曜変天目茶碗をなんと
してもみたいと思うにちがいない。世界に3碗しかなく、すべて日本に伝世
していて国宝に指定されている名碗なのだから鑑賞欲を強く刺激する。所蔵
しているのは今年10月丸の内にやって来た静嘉堂文庫美、同じく今年の
4月にリニューアルオープンした大阪の藤田美、そして京都の大徳寺龍光院。
曜変天目の存在を知ったのはNHKで特集された美術番組。こんなお宝中お
宝みたいなやきものがつくられた中国では忘れられ日本に渡り足利将軍家の
書院に飾られたというすごくドラマチック話にひきこまれた。茶碗のなかに
星々の輝く宇宙がひろがる信じられないような光景をいつかこの目でみてみ
たいと願った。
はじめにお目にかかったのは静嘉堂の‘稲葉天目’、定期的に展示されるのでこれまで4回くらいみた。3碗のなかでは見込みに斑紋が一番多く現れており、底からグルグル渦をまくように口縁にむかって広がっている。目の覚める青の輝きが本当に美しい。まさにやきもので‘最高の瞬間’といえる体験だった。次のサプライズは藤田美、1999年、広島にいたとき山口県萩美・浦上記念館に名品が世界から揃った‘宗磁展’が巡回してきたので、クルマをとばし念願の藤田蔵の曜変天目と対面した。そして、何年かあと大阪にもでかけ再会した。また、嬉しいことに7年前の2015年、サントリー美で開催された藤田美名品展にも披露された。この星たちがつくりだす神秘的な煌きにも息を呑んで眺めていた。
みるのに長い時間がかかったのが龍光院の曜変天目。萩であった特別展の図録には載っているが、残念なことに大阪での展示だけだった。この機会が流れたのでもうダメかとあきらめかけていたら、なんと2017年、京博の‘国宝展’に出品された。写真撮影がOKなのでつま先立ちして撮った(下)。見込みの虹彩は一見地味な印象だが、じっくりみていると光を帯びて輝きを増してくる。これが龍光院の曜変天目か!存分に楽しんだ。3碗全部鑑賞できたのは生涯の喜びである。ミューズに感謝!





