‘黄色い髪の女’(1931年 グッゲンハイム美)
ピカソ(1881~1973)の回顧展はパリのピカソ美蔵によって構成さ
れたものが2003年(上野の森美),2004年(東京都現美),2008年
(国立新美&サントリー美)と3回も開催されたので、ピカソ展はもう遭遇
することはないかなと思っていた。ところが、今年はピカソの当たり年。
春にパナソニック汐留美でイスラエル博蔵の‘ピカソ ひらめきの原点’があり、
10月からはベルリン国立ベルクグリュ―ン美がもっている自慢のピカソが
‘ピカソとその時代’と称し西洋美で披露されている(来年の1/22まで)。
画商でコレクターだったハインツ・ベルクグリュ―ン氏の集めたピカソに
こんなにいいのがあったとは!世界は広いので大巨匠ピカソの絵は多くの美
術館やコレクターが夢中になって蒐集したことを再認識した。
天才画家はいろんなスタイルで描きたいものを表現できる。ピカソもその例に
もれず、形態の革命 キュビスムで世間をあっといわせただけでなく、その前の
‘青の時代’には心にズシンとくる人物画を多く描いているし、‘新古典主義時代’
にてがけたものは彫刻的な人物が登場したり、写真のような写実的な描写に
回帰する。さらに、1930年代にいたりマティスの影響をうけ、キュビスム
の真骨頂である多視点からの表現を色彩の力によってモチーフの形を際立たせ
ていく。そのころに誕生したカラフルなピカソに200%魅了されている。
フォーヴィスムや表現主義を彷彿とさせる絵をピカソは1901年の時点で描
いている。それはバルセロナのピカソ美にある‘マルゴ’。女性の顔の表情をす
こし柔らかくしたら、マティスが描いたようなものになるし、背後の点描のよ
うな描き方にも目が点になる。2013年、Bunkamuraで行われた‘グッゲンハ
イム美展’に出品された‘黄色い髪の女’はついついキュビスムの絵ということを
忘れて黄色の髪と緑のソファをいい気分でみていた。これほど優しい女性を描
いたピカソはほかにみたことがない。これはマティスの‘夢’とのコラボ作品。
この絵の黄色をみてから、ピカソの黄色と緑にすごく惹かれていった。‘鏡の
前の少女’でもこの2色が豊かな装飾性の表現に貢献している。さして、安心し
てみれるのが多用される丸いフォルム。少女の顔の丸さにはじまって体全体が
ピーナッツの殻のように球体をイメージさせる。黄色が一段と輝く‘ドラ・マ―
ルの肖像’との対面はピカソで‘最高の瞬間’!のひとつとなった。岡本太郎の彫刻‘太陽の塔’を連想させる‘読書’にもぐっとくる。これはまさにキュビスムとフォーヴィスムの幸せな合体ともいえる傑作である。