‘音楽’(1939年 オールブライト・ノックス・アート・ギャラリー)
‘エトルリアの花瓶のある室内’(1940年 クリーブランド美)
西洋絵画に関心が深まると記憶にとどまる画家の数はどんどん増えていく。
名前を覚える順番は古い時代からと決まっているわけではなく、画家との
接近度が深まるかは訪問した美術館に展示されているコレクションの質の
高さや数の多さ、さらには開催される展覧会のインパクトの強さが大きく
関係してくる。たとえば、マティス(1869~1954)だとパリのポン
ピドー、サンクトペテルブルクのエルミタージュ、そしてアメリカの美術
館が所蔵している作品の数々がマティス物語をつくってくれている。
1ヶ月前、来年の春、東京都美で‘マティス展’(4/27~8/20)が開催
されることを知った。チラシの情報によるとポンピドーのコレクションを
中心に作品が構成されるようだ。マティスの回顧展はピカソのように何度
も開かれるのと違い、2004年西洋美であったものを体験しただけなの
で20年の間隔があいた分、目を存分に楽しませてくれる名画がどーんと
揃うことを期待したくなる。
アメリカの美術館が日本で開催する名品展に出かけたり、2008年から
はじめたアメリカでの美術館巡りをつみかさねていくことで名の知れた
美術館がマティスのいい絵を予想以上に多く所蔵していることがわかった。
その‘最高の瞬間!’を最初に体験したのがバッファローにあるオールブライ
ト・ノックス・アート・ギャラリー蔵の‘音楽’。マティスの人物描写のすば
らしさを実感した最初の絵かもしれない。二人の女性の異様に長い手や足が
違和感なくみれるのだから不思議。
‘音楽’同様、日本にやって来てくれたフィラデルフィア美自慢の‘青いドレス
の女’や回顧展でお目にかかったクリーブランド美にある‘エトルリアの花瓶
のある室内’にも魅了され続けている。とくに心がとろけているのが現地で
も楽しんだ‘青いドレス’、平面的な人物描写だが、赤と黒の巧みな組み合わ
せが華のある女性を浮き上がらせている。初期の作品ではフォーヴィスム
全開の‘窓’(ワシントンのナショナルギャラリー)と1994年西洋美での
開催で話題になった‘バーンズコレクション展’に登場した‘生きる歓び’が忘れ
られない。