‘ドゥㇽイイ―指揮官夫人の肖像’(1926年 プティ・パレ美)
パナソニック汐留美で開催中の‘キース・ヴァン・ドンゲン展’
(7/9~9/25)をみてきた。新型コロナウイルス感染の7波が勢いを
増すのと開幕が重なったため出遅れたが、意を決して足を運んだ。ヴァン
・ドンゲン(1877~1968)に心が傾くきっけかとなったのが
エルミタージュ美(サンクトペテルブルク)でお目にかかった‘黒い帽子の
女’。チャーミングな大きな目と緑の衣装に強く惹かれるこの女性の肖像を
描いたのは説明書きによるとヴァン・ドンゲンとある。まったく知らない
画家。この絵から画家が気になる存在になった。
今回出品されているのは水彩やリトグラフなどをふくめて全部で67点。
油彩は45点。これほどの数のヴァン・ドンゲンが一度にみれるなんて夢
のよう。国内の美術館からも自慢の作品が21点も並んでいる。そのなか
には、たとえば図版をMyヴァン・ドンゲン図録に張り付けているひろしま
美、諸橋近美、ポーラ美、大谷コレクションが所蔵するものがあったが、
まだこんないい絵が日本にもあったのか、という作品が姿を現してくれた。
大作の静物画‘中国の花瓶’に思わず、うあーと声が出た。これは昨年の
ポーラ展(Bunkamura)に出品されてなかったからびっくりした。そして、
ユニマットグループ蔵の気品があり美形の‘婦人の肖像’にも吸いこまれた。
立ち尽くしてみていたのが2点ある。どちらも大きな絵で本人の前に立っ
ているように錯覚する‘ドゥㇽイイ―指揮官夫人の肖像’と‘女曲芸師’。鮮や
かな黄色の衣装が目に焼きつく細見で長身の女性はいつもはパリのプティ
・パレに飾られているもの。この絵は1991年パリで美術館めぐりをし
たときみたことを思い出した。Myカラーが黄色&緑であるから瞬間的に
記憶がよみがえった。嬉しい再会である。‘女曲芸師’の舞台衣装の色は緑。
色彩への強い思い入れが真骨頂のフォーヴィスムの画家ヴァンドンゲンと
の相性がいいのは黄色と緑が多用されているからかもしれない。
入館してすぐのところの部屋に展示されてる‘パリジェンヌ’に思わず足が
とまった。左の女性が着ている服の青の輝きがどーんと目の中に飛び込ん
できた。よくみると右の女性ともども目も同じ青で描かれ、帽子の飾
りや髪にも青が。色彩の革命をもたらしたフォーヴィスムは常識では考え
られない色がでてくる。顔だろうが頭の髪だろうが心に感じた色で大胆に
描く。これは子どものお絵かきのようでもある。素直に色を想像し自由に
表現する。画家の創作の源は色彩にある。